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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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「けど、それに噛まれて生きているなんて……、ありえない」

「それがありえたんだ。グラファン家は魔力が強い家で、魔法は一流だ。幼いリーシャ・グラファンは防衛反応で咄嗟に己の魔力で抵抗した。ダクトは魔力はそう強くない魔物だ、すぐに石化は止められた。……が、首元と顎の皮膚は硬くなり灰色に染まった」

「だから、口元を隠しているのね」

「ああ。愛くるしい可憐な少女だったが、その日を境に化け物扱いをされるようになった。人々は命が助かった奇跡ではなく、違う見方をしたんだ。汚らわしいものを見るかのように『呪われた子』と少女に名付けた。彼女と話せば呪いが移るだの、肌を見れば視力を失うだの、大勢の者がリーシャ・グラファンを遠ざけて、孤立させた」

 …………なるほどね。

 昨夜抱いた謎がようやく解けたわ。レグネルはどうしてこのことを私に言いたがらなかったのだろう。

「そんな馬鹿げた噂、皆鵜呑みにして馬鹿みたい。少し調べれば分かるわよ、ダクトの石化に感染要素は一切ない」

「みんなエルヴィのようだったらよかったのにな。残念ながら、多くの者たちは噂や風潮に流される者たちばかりだ」

「彼女がどんな人なのか自分自身で確かめるって能力が欠如しているのね、愚かな人たち」

 リーシャに対して悪い噂を広めていく人々に対して私は嫌悪感を持ってそう呟いた。

 別に私はリーシャの味方ではない。まだ彼女がどんな人物なのか把握しきれていない。これから探っていく予定だ。

「リーシャが穢れを持っていると信じ込んでいる者たちに平手打ちを食らわせてやろうかしら」

 私がそう言うと、カイルはハハッと小さく笑いながら口を開いた。

「良くも悪くも何かを信じ込むってのは、強い力になる。恐ろしいことだが、信念というのは国の最強の武器になり得るのさ」

「リーシャの場合は、信じることで強くなったわけじゃない。ただ、疑うことを忘れたんですよ」

 私がそう言ったのと同時に休憩が終わる鐘が訓練場に鳴り響いた。

 カイルは私の言葉に少し固まった様子でじっと私を見ていたが、すぐにいつも通りの鬼教官の顔になった。一瞬でモードが切り替わる。

「休憩は終わりだ」

 休憩は終わりかぁ……。

 リーシャについては、また別の角度で情報を集めるか。

 私は無理やり気を引き締めて「はい」と力強く返事して、訓練へと戻った。

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