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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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「世界を守りた……」

 途中で言葉に詰まった。ヴィナスの私を射貫くような目に私は正直に答えなければならないと思った。

 勇者失格の回答でもいい。……というか、正解などない。勇者を目指す者の数だけ回答があるはずだから。

「明確な理由が思い出せないんです」

 もう振り切ってそう答えた。その瞬間、自分の中にあった心のバリアのようなものが崩れた気がした。

 ヴィナスは黙ったまま私の話を聞いてくれる。

 思い出せないことばかりだね、と茶化すことなく、聞く姿勢に入ってくれていることが嬉しかった。

「勇者になりたいという強い気持ちだけに後押しされていただけでここまで来ちゃったんです。……けど、今さっき少しだけ気持ちを思い出した気がしました。『英雄は誰?』の絵本……、私はやっぱり彼になりたい。『世界を守る!』なんて思い始めたのは後付けでしかなくて、私が過ごす大切な世界を壊されないための強さがほしかったのかも……」

 そう言いながら、私は確信した。自分の中で何か記憶が欠如しているということを。

 思い出せないというよりも抜き取られているような……。

「私は私のために勇者になろうとしてたんです。自分勝手ですよね」

 私が苦笑いすると、ヴィナスは真剣な口調で答える。

「みんな自分勝手さ。……誰かのために勇者になろうとすることも自分のために勇者になろうとすることもたいして変わらないよ」

「じゃあ、私は、私のために勇者になります」

 気付けば私は笑みをこぼしていた。

 勇者というものに捉われていた自分が解放されたような気持ちになる。

 私は「あと!」と話しを続けた。

「大切な人を守れる勇者になりたいって思っていたんですけど、今は違います」

 きっと、私は夢の……いや、私の薄れている記憶の中にいる女の子を守りたくて勇者になりたいと思ったのだろう。

 最初のきっかけはなんだっていい。今の理想の勇者像が変わったっていいんだ。

 だって、私は今この瞬間を生きているのだから。

「今は?」

 私はスゥッと小さく息を吸って、真っ直ぐ彼を見つめた。美しい彼の紫色の瞳に覚悟を決めた自分が映る。

「ヴィナス様に背中を預けてもらえるようになりたい」

 彼の瞳が散瞳するのが分かった。瞬きすることなく、私を見つめている。

「それが私のなりたい勇者です」

 私はそう言って、彼に微笑んだ。

 心からの言葉だった。

 私はきっとヴィナスがいる限り勇者にはなれないだろう。けれど、勇者を手助けできることはできるはず。

 あの魔物退治の時にヴィナスに助けられた時に私は決めたのだ。

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