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馬車から下りて、ローズとともに街をぶらぶらと歩く。
楽しげな街の様子に自然と気分が上がる。買い物を沢山しようとおもったが、実際は物欲はそこまでない。ほしいものは全て手に入るから、物欲というものがない。
……貴族で良かったぁ。
こういう時だけ貴族に生まれたことのありがたみを感じる。
「ねぇ、ローズ、こんな店あったかしら?」
少し訪れない間に新しい店が増えている。
私は見たことのない扉の前で立ち止る。最近ペンキで赤色に塗りなおしたような扉を眺める。
建物自体は木造で古く、新しくしたのは扉だけのようだ。
看板の方へと視線を向ける。
「剣が二つ交わっている……、武器屋?」
私がまじまじと看板を眺めていると、ローズが口を開く。
「行きましょう、エルヴィ様」
「ここが何か知ってるの?」
ローズがこの場から立ち去りたそうにしている様子を察する。
「エルヴィ様が入るような場所ではございません」
「娼館とか?」
「なッ!!!!」
私の発言にローズは顔を真っ赤にする。
どうやら娼館ではなかったそうだ。……そりゃそうだ。この看板で娼館だったら、店主のセンスを疑う。
「入ってみていい?」
私は興味本位でローズにそう聞く。彼女は首を横に勢いよく振って、私の腕を小さな力で引っ張る。
「早くここから去りましょう」
……そんなに入らせたくないのなら、ここがどんな場所かますます気になる。
殺し屋? ……こんな堂々と看板を出すわけないか。
騎士専用の食堂? ……いや、そんな雰囲気でもない。
「入っちゃおう」
私はそう言って、扉に手をかけた。その瞬間だった、後ろに忍び寄ってきていた影が私に声をかける。
「よう、別嬪さん」
私はゆっくりと振く。
陰でガタイの良い男だということは分かっていたけれど、顔まで強面だとは……。
私はそのんあことを思いながら目の前にいる中年の男性と目を合わせる。髭も髪ももじゃもじゃだ。
「なに」
私は彼の圧に負けないように、睨み返す。
「ここに一体なんのようだい」
「何があるのか確かめたくて」
「お嬢さんみたいな子が来る場所ではないぜ」
「……何があるの?」
「いいから、そこをどきな」
急にもじゃもじゃは威圧的な態度になる。
「女禁制なの?」
「ああ、そうさ。特に美人令嬢様が来るような場所ではないさ」
彼は私を無理やりどかせて、扉を開けて入っていった。
私のような者が来る場所ではない、という情報に気を取られて油断していた。
もっと、彼から情報を引き出したかったのに!!
しょうがない、こうなったら、入っちゃえ!
私は後先を考えずに、扉を開けようとした。




