142 エルヴィ・ケーレス 十六歳
雲一つない晴天……! まさしく入団試験日和だわ!
私は朝早くから王宮に着いた。
準備といった準備もないのだけれど、なんだか家にいても落ち着かなくて出てきた。
家を出る時に、レグネルと顔を合わせてしまって、どこか気まずかったけど……。朝の挨拶だけ交わしただけ。…………レグネルと話し合う時間を設けないと。
私はそんなことを思いながら、まだ誰もいない筆記の試験会場へと入る。
王宮の勇者試験会場として使われている場所を今日は新設騎士団の入団試験会場として使う。
噂は早くも広まり「勇者落ち騎士団」なんて巷では呼ばれているみたい。正式名は「特別騎士団」なのに……。
騎士たちはこの名が気に食わない人が多いみたい。「なんでお前らが特別って名が付くんだよ」という不満の声が上がっているそうだが、結局その声に応えられることなく「特別騎士団」の名で貫くことになった。
「出世だな」
突然、背後からカイル団長の声が聞こえてきた。私は振り向き、「カイル団長!」とパッと表情を明るくする。
「新人があっという間に騎士団長か」
「皆に恨まれますかね……」
私がそう言うと、カイル団長は鼻で笑った。
「騎士たちは皆、お前の実力を分かってるさ。それに、街での魔物討伐の時もお前の闘志姿を目の当たりにしている。誰も文句は言わないさ」
「文句を言わせないほどもっと強くなります。……そういえば、昨日は、助けていただきありがとうございました」
昨日の舞踏会での一件を思い出し、私はカイル団長に頭を下げた。
まさかあの状況でカイル団長が助けに来てくれるとは思わなかった。この人は、ああいう面倒くさいことに関わりたくないタイプなのに……。
「あまりにもあの女に腹が立っただけだ。……元々ああいう場は嫌いだし、行くつもりじゃなかったが、嫁に『折角だから参加しなさい。団長である貴方が行かなくてどうすの』って怒られて、仕方なく行ったんだが、お役に立てたようで良かった」
赤鬼にそんなことを言える奥様すごい。一度会ってみたいわね……。
「大変です……!!」
大慌てで一人の衛兵が筆記会場に入ってきた。「どうしたの?」と息を切らす衛兵に私はきょとんとしながら視線を向けた。
「あの……、特別騎士団の団長がエルヴィ様だと分かって……、応募者たちが納得行かないと、会場に入ろうとしないんです……!」
衛兵は何とか呼吸を整えながら、そう言った。
……まさかの展開。けど、想定していなかったわけでもない。
私は一度勇者落ち集会の場に顔を出している。そこで彼らがどういう人物なのかはざっくりと把握している。彼らなら、「あのお嬢ちゃん」が団長だなんて納得するはずがない。
カイル団長は私の隣で「なんだと?」と鋭い視線を衛兵に向けている。衛兵はその眼圧に「ヒィ」と小さく悲鳴を上げる。
「彼らに言いなさい。もし、二次試験の実技で私に勝つことができたら、団長の座を譲るってね」
私はニヤッと笑みを浮かべて、衛兵に向かって、はっきりとした口調で声を発した。




