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「エルヴィに触らないでくれるかい?」
ヴィナスがついに口を開いた。
桃色の髪の女はすっかり泣き止んで、首を忙しそうに動かしながら私たちの様子を見ている。
アーサーは少し考えてから、口を開いた。
「……ですが殿下はもうエルヴィと婚約ッ……! んんんッ……!」
アーサーはどうやら突如声を出せなくなったようだった。
今の一瞬でヴィナスが魔法をかけたようだ。……恐るべし、魔法能力。絶対にヴィナスを敵には回したくない。
婚約破棄を公にされるのはまずいと思ったのだろう。………待って、どうしてそのことをアーサーは知ってるの? てか、そもそもどうしてアーサーは突然私を助けてくれたの?
色々な疑問が私の頭の中に浮かんでくる。
「……俺からもいいか?」
聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
私たちを取り囲む人だかりの中からガタイの良い赤髪の大男が現れる。
……カイル団長!! 来ていたのね!!
会場で見かけなかったから、来ていないのだと思っていた。……それか、私よりも遅れてきたか。
「これはこれは王宮騎士団の団長様じゃないか」
アーサーは私とヴィナスの婚約破棄以外のことについては話せるのか、どこか楽しそうに声を発した。
カイル団長が出てきたことによって、会場がざわつく。まさかこの騒動に赤鬼のカイルが登場するとは誰も思わなかったのだろう。
私はカイル団長へと視線を向けた。
なんというか、すごく舞踏会に似合わない風貌だ。分かっていたけれど、これほどのミスマッチ感だったとは……。
「今、失礼なこと考えてただろ?」
私の表情から私の考えていることを読み取ったのか、アーサーは私の顔の近く周りに聞こえないほどの声でそう聞いた。即座に「いや、全く」と私は返す。
そんなことよりも、私にこれ以上近づかないでほしい。ヴィナス様の殺意がこれ以上膨らむと、本当にアーサーを殺しかねない。
私はアーサーから離れようとするが、彼の力はなかなか強く思ったように彼の腕の中から抜けれない。
……私の命までも危ない気がしてきた。
「ここには少し遅れてきたが、この件に関しては一部始終見ていた」
カイルは荒い口調でそう話し始めた。そして、一度スゥっと息を吸い、カイルの瞳から光が消えた。
「エルヴィの行動が避難されるなら、確かにこんな世界は『くそっくらえ』だ」
再び発せられたカイルの重い声にここにいる全員の背筋が凍っただろう。
……すごい迫力だ。
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あけましておめでとうございます~~!




