132
リーシャを横目で見る。
無表情で冷静なままだ。彼女にとって、いつものことなのだろう。
「レグネル様ってルナ様といい感じだったんじゃないの?」
「彼女が奪ったのよ……」
「美男美女でお似合いだったのに……。私の目の保養が……」
「よくここに顔を出せましたわね」
聞きたくない雑音が耳に入ってくる。彼女たちはコソコソと話すことをやめたのか、あえて私たちに聞こえるように話し始めた。
「レグネル様があの化物を好きになるなんておかしいわ。きっと呪いをかけたのよ」
もう限界だった。
私はリーシャのことを化物と言った女性の元へと静かに足を進めた。カツカツッと私のヒールの音がやけに大きく聞こえた。
私が動き出した瞬間、周りの空気が変わった。緊張感が走る。
「エルヴィ様……」
リーシャの小さな声が後ろから聞こえた。
大丈夫よ、リーシャ。あの女に貴女を侮辱したことを後悔させる。
「な、なによ……」
桃色の髪が特徴的で丸みのある大きな目が私を睨む。彼女の周りにいた女性たちは私の存在に怖気づいたのか、自分は関係ないという表情をして、この場を離れる。
「ちょ、ちょっと、どこいくのよ、卑怯よ」
逃げ出す女性たちに桃色の髪の女は慌てた様子でそう言った。
それほど薄い仲だったということだ。偽りの友情が分かって良かったじゃない。
私は桃色の髪の女の前に立ち、じっと威圧的に彼女を見据えた。ヒィッと小さな悲鳴を上げる。
喧嘩する度胸もないのに、喧嘩を売るなんて馬鹿じゃないの……。
「さっきの言葉、取り消してくださらない?」
私は丁寧に重い口調でそう口にした。
「……私は悪くないわ。真実を言っただけだもの」
桃色の髪の女は絞り出すように声を出す。私はその言葉に顔を顰めた。
「真実を言った?」
「ええ、そうよ」
彼女は私の殺気に怯えながらも、強く睨みつけて話を続けた。
「この女は怪物よ! 皆、分かっているもの! 魔物によって呪われているんだから! ……私が暴いてやる! 証拠はあるんだもの!」
桃色の髪の女は甲高い声を上げて、リーシャの方へと勢いよく突進した。私が止める間もなく、女はリーシャの口元を覆う布を容赦なく掴んだ。
「……やめて!」
リーシャの嘆きの声と共に、女は力強く布を引っ張った。
次の瞬間、リーシャの隠されていた顔が露わになった。




