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僕らは過去に戻ったかのように話し合った。
昔のようにリーシャの話を聞いて笑い合い、時に軽く言い合ったりなどした。本当に時間が巻き戻ったかのようだ。
すれ違った時間を埋めるかのように、沢山会話をした。
この穏やかな居心地の良さが俺は好きだった。
「……あの、どうして今、謝りに来てくださったのですか?」
リーシャは突然思い出したようにそう聞いた。彼女はそのまま言葉を足した。
「ふと疑問に思って……。あれから随分と年月を経ています。……謝りに来るのは勇気がいったでしょう?」
「その勇気をくれたのはエルヴィなんだ」
「エルヴィ様が?」
「そう。あいつは本当に凄いよ。くだらない俺の思考を正した。『行動しろ』って妹の背中が言ってたよ。俺、かっこ悪いよな……」
俺は苦笑しながら、そう言った。
リーシャは真剣に俺の話を聞いて「いえ」と首を横に振る。口元を覆っている布がひらひらと揺れる。
「正直、俺はここにくるまでめちゃくちゃビビってたんだ。拒絶されたらどうしようって……。けど、リーシャはそんな拒絶を日々耐えてたんだな……。本当にすまなかった。助けられなくて、一人にして、悪かった」
俺はその場でリーシャに向かって深く頭を下げた。この部屋の空気が少し張り詰め、静寂に包まれる。
リーシャがどんな顔をしているのか分からない。
怖い、という感情が胸の底から湧き出てくる。
「レグネル様」
暫くして、彼女は丁寧に俺の名を口にした。
俺はゆっくりと顔を上げて、リーシャの方を見た。彼女は優しい眼差しを俺に向けていた。
「私はずっとレグネル様にお礼を言いたかったんです」
「お礼?」
なんのことか分からずに俺は眉をひそめた。
「誰かが私の悪口を言うたびに、レグネル様が注意してくださっていたのを知っています」
「どうしてそれを……」
「レグネル様はいかに女性にご自分が人気か分かっていないんですね」
リーシャは小さくそう笑って、説明を加えた。
「注意された女性たちが目くじらを立てて私の元へやってきました。レグネル様に注意されたことがよほど悔しかったんでしょうね。普段私のことを睨んでいるだけの彼女たちが直接話に来たんですもの」
「悪い、逆効果だったとは」
「謝らないでください」
俺の言葉を遮るようにリーシャは声を被せた。
「彼女たちの嫌味がどうでもいいと思えるぐらい嬉しかったんです。……レグネル様もエルヴィ様も、二人とも私のヒーローです」
リーシャの声が柔らかく心に響いた。




