123 レグネル・ケーレス 十八歳
ついに来てしまった。
俺は心臓をバクバクさせながら、グラファン家の応接間でリーシャを待っていた。
エルヴィに背中を押されて、勢いで来たものの……、何を話せばいいのか。
リーシャはきっと、「最近の女の子が好きな話」は興味ないだろう。社交界で色んな女の子と話してきたが、リーシャは全くの別ジャンルだ。
……ああ、エルヴィも一緒にいてほしい。
いや、でもエルヴィも今ヴィナスの元で頑張っているのか。
ケーレス家兄妹、頑張る日、だな。……なんだその日は。
自分の考えたことを心の中で突っ込みながら、リーシャが現れるまでの間、気を紛らわす。
そんなことをしていると、コンコンっと扉のノックさせる音が部屋に響いた。それと同時に俺はごくっと息をのむ。
「リーシャです」
彼女の澄んだ綺麗な声が扉越しに聞こえてくる。一拍置いて、「失礼します」という声と共にガチャッと扉が開いた。
今日も変わらずリーシャは口元を薄布で覆っており、髪と同じ色の深い藍色のシンプルなドレスを着ていた。体の線を主張するリーシャに似合った上品なドレスだ。裾には銀色で刺繍された繊細な模様が施されている。そして、首をしっかりと覆うように作られていた。
頭の後ろで三つ編みを一つにしたヘアスタイルだ。
社交界で女性と話す時に、いつもファッションスタイルを一通り見る。そして、どこを褒めるかを絞る。
いつもなら簡単に褒める言葉が出てくるのに、うまく言葉がでてこない。
リーシャの華美ではない品性のあるスタイルがあまりにも自分好みで、褒めるところが多すぎる。
「本当にレグネル様が来ていらしゃったのですね」
リーシャは俺を見て、少し驚いた様子でそう呟いた。
「迷惑だったか?」
俺がそう言うと、リーシャはすぐに「いえ」と否定する。
「ただ、その、少し驚いてしまっただけで」
リーシャはそう言って、ドレスの両端を摘み、美しい所作で僕にお辞儀をする。
……相変わらず目を奪われるお辞儀だ。
リーシャは静かに俺の前に腰を下ろした。
…………何を話そう。
妙に気まずい沈黙が流れる。
ここまで来たのに、言葉に詰まってしまう自分があまりにも情けなかった。
何かあるだろう、一つぐらい話題が!
心の中でそう叫ぶが、少しもいい話題が思いつかない。
「……エルヴィ様のことですか?」
リーシャが先に口を開いた。俺は「え」と声を漏らし、リーシャと目を合わせる。
エルヴィ……? なんでエルヴィが?
「もうエルヴィ様に近寄るなという」
「違う!」
俺は慌ててリーシャの言葉を否定する。俺の勢いにリーシャは少し瞳を大きくする。
「そんなことを言いに来たんじゃない。それに、エルヴィとはこれからも仲良くしてやってくれ。エルヴィにとって初めての友達なんだ」
「私にとっても初めての友達です」
リーシャの目元が柔らかくなるのが分かった。俺は無意識に言葉を発していた。
「その友達がリーシャで良かった」




