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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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123/142

123 レグネル・ケーレス 十八歳

 ついに来てしまった。

 俺は心臓をバクバクさせながら、グラファン家の応接間でリーシャを待っていた。

 エルヴィに背中を押されて、勢いで来たものの……、何を話せばいいのか。

 リーシャはきっと、「最近の女の子が好きな話」は興味ないだろう。社交界で色んな女の子と話してきたが、リーシャは全くの別ジャンルだ。

 ……ああ、エルヴィも一緒にいてほしい。

 いや、でもエルヴィも今ヴィナスの元で頑張っているのか。

 ケーレス家兄妹、頑張る日、だな。……なんだその日は。

 自分の考えたことを心の中で突っ込みながら、リーシャが現れるまでの間、気を紛らわす。

 そんなことをしていると、コンコンっと扉のノックさせる音が部屋に響いた。それと同時に俺はごくっと息をのむ。

「リーシャです」

 彼女の澄んだ綺麗な声が扉越しに聞こえてくる。一拍置いて、「失礼します」という声と共にガチャッと扉が開いた。

 今日も変わらずリーシャは口元を薄布で覆っており、髪と同じ色の深い藍色のシンプルなドレスを着ていた。体の線を主張するリーシャに似合った上品なドレスだ。裾には銀色で刺繍された繊細な模様が施されている。そして、首をしっかりと覆うように作られていた。

 頭の後ろで三つ編みを一つにしたヘアスタイルだ。

 社交界で女性と話す時に、いつもファッションスタイルを一通り見る。そして、どこを褒めるかを絞る。

 いつもなら簡単に褒める言葉が出てくるのに、うまく言葉がでてこない。

 リーシャの華美ではない品性のあるスタイルがあまりにも自分好みで、褒めるところが多すぎる。

「本当にレグネル様が来ていらしゃったのですね」

 リーシャは俺を見て、少し驚いた様子でそう呟いた。

「迷惑だったか?」

 俺がそう言うと、リーシャはすぐに「いえ」と否定する。

「ただ、その、少し驚いてしまっただけで」

 リーシャはそう言って、ドレスの両端を摘み、美しい所作で僕にお辞儀をする。

 ……相変わらず目を奪われるお辞儀だ。

 リーシャは静かに俺の前に腰を下ろした。

 …………何を話そう。

 妙に気まずい沈黙が流れる。

 ここまで来たのに、言葉に詰まってしまう自分があまりにも情けなかった。

 何かあるだろう、一つぐらい話題が! 

 心の中でそう叫ぶが、少しもいい話題が思いつかない。

「……エルヴィ様のことですか?」

 リーシャが先に口を開いた。俺は「え」と声を漏らし、リーシャと目を合わせる。

 エルヴィ……? なんでエルヴィが?

「もうエルヴィ様に近寄るなという」

「違う!」

 俺は慌ててリーシャの言葉を否定する。俺の勢いにリーシャは少し瞳を大きくする。

「そんなことを言いに来たんじゃない。それに、エルヴィとはこれからも仲良くしてやってくれ。エルヴィにとって初めての友達なんだ」

「私にとっても初めての友達です」

 リーシャの目元が柔らかくなるのが分かった。俺は無意識に言葉を発していた。

「その友達がリーシャで良かった」

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