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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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 魔剣を作る際、ほとんどの者は一回で作らない。

 かなりの魔力と体力と気力を消耗し、集中力を保てなくなるから、数日に分ける。それが本来の作り方だ。

 かなりの時間を要するし、更に成功する確率は極めて低い。なぜなら、どこかで魔法言語が僅かに間違っていたりするからだ。

 それなのに、彼女はたった数分で終わらせた。

 ゴッカドルスに刺さっている魔剣を確認しに行った時に僕は目を疑った。

 魔力を凝縮させて作っていたのだ。そうすることで、数時間かかる作業を数分で終わらすことができた。

 鳥肌ものだ。そんなことができる人間はこの世にいない。

 作るスピードに重きを置くと、丁寧さが欠け、質が落ち、絶対に失敗する。だから、数日に分ける。

 その「絶対」をエルヴィは変えたのだ。

 僕がいなければ、エルヴィ・ケーレスは本当に伝説の勇者になっただろう。

 エルヴィはゆっくりと歩くスピードを落として、「少し座って、お話をしませんか?」と僕の方を見た。

「そうだね」

 僕らはここから一番近い白い石造りのベンチへと向かった。木陰になっていてちょうどいい。

 彼女から話をしようと言ってくるのはなんだか新鮮だった。

 エルヴィと僕はベンチに腰を下ろす。しばらくの間、どこか気まずい空気が流れる。

 ……エルヴィは何を話したいのだろう。

 僕からはあえて聞かずに彼女が話し始めるのをゆっくり待った。

「……あの、ヴィナス様」

 僕の名を呼ぶ透明感のある声が沈黙を破る。

「これからもヴィナス様と一緒に魔物退治のお供をしてもいいでしょうか?」

 魔物退治……。

 その話か、と頭の中でスイッチを切り替える。

 エルヴィなら考えそうなことだ。ずっと勇者を目指していた彼女なら、その考えに至るのは納得できる。……が、簡単に肯定はできない。

 もちろん、エルヴィの戦闘能力の高さは買っている。しかし、やはり目立ってほしくないという私情を挟んでしまう。

「必ず役に立ちます」

 なかなか何も言わない僕にエルヴィは更にそう言葉を付け足した。

「それは分かってるよ」

 できる限り感情を抑えて、そう言った。

 危なかった……。気を抜けば、すぐにエルヴィに向かって微笑みそうになる。

 エルヴィを愛おしいと思う気持ちを顔に表してはいけない。僕らの関係は今では……勇者と補欠勇者と言ったところだ。

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