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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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115 ヴィナス・ジェガナ 十八歳

 …………驚いた。まさかエルヴィが僕に会いに来るとは。

 内心は心臓がうるさかったが、平然を保つ。

 エルヴィと王宮の庭を散歩しながら、彼女にゴッカドルスの戦いの結末を話す。

 きっと、彼女はあの戦いの最後を知りたくて僕に会いに来ただけだ。自惚れるな、と自分に言い聞かせる。

 ……それでも、こうして彼女と会話できていることが嬉しかった。

「君は見事にゴッカドルスの目を潰したんだ。僕の魔法で彼のもう一つの翼を燃やした。「カイル団長! 止めを!」と叫び、エルヴィは気を失った。ゴッカドルスからエルヴィを僕が抱きかかえて離し、落下していくゴッカドルスにカイルが止めをさした。あれもまたすごかった。やっぱり王宮騎士団の団長に上り詰めただけのことはある。とても人間業とは思えなかった」

「詳しく教えてください」

 エルヴィは目を輝かせて僕の方を見る。僕はそんなエルヴィを可愛いなと思いながら、話を続けた。

「下にいたカイルは騎士たちに逃げるように言って、落ちてくるゴッカドルスの真下で剣を構えていた。あの時の殺気というか覇気は凄まじかった。敵に回したくない相手だと改めて思ったよ。……彼は魔物にも熟知している。ゴッカドルスの心臓の位置を把握していた。彼はゴッカドルスの心臓を切り裂いて、ゴッカドルスの下敷きになった」

「……え、下敷きになったんですか?」

「うん、下敷きになった」

「じゃあ、カイル団長は」

 今度は不安そうな目を向けるエルヴィに僕は神妙な顔で「カイル団長は」と言って、少し間を置いた。 

「ゴッカドルスの死体を突き破り、上から出てきた」

「え……? 無事なんですか?」

 呆気にとられたようにエルヴィは瞳を大きくして僕を見る。 

 コロコロと表情が変わり、エルヴィは見ていて楽しい。

「ああ。ゴッカドルスの血で血まみれだったけど、ピンピンしていたよ。……あの赤鬼のカイルもついにここで終わりかって全員が思っていたが、やっぱり赤鬼のカイルだった。いまだに彼がどうして生きているのか僕にも謎だよ」

「……すごい」

 エルヴィは感嘆の声を漏らす。

 あのカイルの姿は、普段エルヴィ以外の人に対してなんの感情を持たない僕も「すごい」と感心した。

 だが、それよりももっと驚いたことがある。

「怪我は?」

「腕を一本折っていたけど、回復魔法でもう治っているよ。もう訓練場に復帰して、今日もまた騎士たちに恐れられているよ」

 エルヴィは僕の隣で「良かった~」と胸を撫でおろし、更に敬意を込めてカイルの話を続けた。

「カイル団長、やっぱり化物ですね。……信じられない。本当に同じ人なのかしら」

 …………正直、僕はエルヴィの方が化物だと思った。

 あの短時間であれほど完成度の高い素晴らしい魔剣を作り上げたのだから。

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