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…………煽りすぎたかもしれない。
自分でも随分と棘のある言葉を発していたのは自覚している。
私はレグネルの声に押されて硬直する。
いつも穏やかでゆるっと生きているレグネルに怖いものなんてあるのね……。しかも、それが恋愛だなんて。
「……怒鳴って悪かった」
レグネルは声を落ち着かせてそう言った。「私こそ」と小さな声で返す。
レグネルとリーシャの問題は私が介入することでもない。二人の問題だから……。
だけど、背中を押してあげたい。…………ああ、もうしょうがない。私が先に行動に起こすか。
「お兄様」
「なんだ?」
「今から、ヴィナス様のところに行こうと思うの」
「え?」
レグネルは目を丸くして私を見る。
自分で提案したものの、まさか本当に私がヴィナスの元へ赴くとは思わなかったのだろう。だって、私は婚約破棄された身。
もうヴィナスとはなんの繋がりもない。
「これがどれほど勇気のいることか、お兄様には分かりますか?」
「……ああ。分かるよ」
どんな反応をされるのか分からず、怖い。
ゴッカドルスを倒した時は緊急事態だったから、話は別。
今の想いを伝えに行く。……ああ、もちろん、ゴッカドルスの目を潰した後の話も聞くけど。
「だが、俺はどんな顔をしてリーシャに」
「いつもの顔でいいんですよ。社交界で愛想を振りまいている時の感じで」
「おい、それはちょっと嫌味だろ」
「はい」
私がそう笑うと、つられてヴィナスも笑った。私は言葉を加える。
「嫌われている、と思い込んでいるだけでは? 直接本人にそう言われたのですか?」
「いや……」
「もう逃げる言い訳を探すのはやめては?」
リーシャがもし本当にレグネルのことが嫌いなら、レグネルが元気かどうか、あんな風に聞いてこない。
それに、リーシャもまだきっとレグネルのことを思っている。
まぁ、何はともあれ、レグネルがリーシャと会うことを躊躇っていても、私は前に進ませてもらう。
「お兄様は私の背中を見ていてください」
私はそう言って、ソファから立ち上がった。
レグネルは私を見て、眉を八の字にさせながら笑みを零した。
「それは俺の役目だろ」




