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「……今でもその子のことを好きなんですか?」
私がそう聞くと、レグネルは暫く黙り込んだ。どこか重い沈黙が流れる。
というか、レグネルって社交界で意外と女たらしじゃなかった?
あの一緒にダンスをしていたルナっていう女性?
ルナとは親密な関係のように見えたけど、レグネルが心を許していた人はいなかった気がする。妹の私だからこそ言える、ルナはきっと初恋の相手ではない。
…………じゃあ、誰?
「ああ、好きさ。彼女のことは一日も忘れたことはない。……けど、俺は彼女を傷つけた」
頭の中で必死にレグネルの好きな相手を考えていると、レグネルは低い声でそう言った。私は彼の言葉に思わず耳を疑った。
……信じられない。あのレグネルがそんな真剣な想いを抱いている相手がいたなんて。
傷つけたってどういう意味だろう。物理的にか精神的にかで随分と話が変わってくる。
私は何も言えずに、黙ってレグネルを見つめた。彼も私をゆっくりと見返した。落ち着いた青い瞳と目が合う。
「エル、想いは大切にしろ。そして、相手に伝えればいい。恋愛なんて自己満だ。……それにこんな世の中だ、いつ魔物に食われるか分からない」
レグネルは最後に少しふざけた調子でそう言って笑みを浮かべた。私も笑って、言葉を返す。
「相手は王族ですよ?」
「だけど同じ人間だ」
……たまには良いこと言うじゃない、我が兄。
たしかに、と私は納得した様子で頷いた。
婚約破棄されたからって、ヴィナスに話に行くのは罪ではない。
「お兄様こそ、今もまだ初恋の子を想っているのなら、伝えるべきです」
一呼吸置いて、私はレグネルに向かって声を発した。
「今更だ。きっと、もう」
「お兄様が言ったんですよ。想いは大切にして、相手に伝えろって。有言実行してください」
「それもそうだ」
レグネルは困ったように笑う。私はずっと気になっていたことを聞いた。
「初恋の子って誰ですか?」
「リーシャ・グラファン。今ではもうエルのよく知っている相手だ」
…………リーシャ!?
私はレグネルの口から出たその名に思わず固まってしまう。ポカンと口を開けたまま、レグネルを見る。
ちょっっっっと、待って。
……うあぁぁ、なんか点と点が線になりそう。……繋がっていく。
けど、まさかリーシャだとは思いもしなかった。
「そういうこと!?」
私はついにレグネルの発言に思考が追い付き、大きな声を出した。
「そういうことだ」
レグネルは落ち着いた様子で首を縦に振った。




