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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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 レグネルは瞳を大きくして、私をじっと見つめていた。固まる彼に私は笑いながら話を変えた。

「もう、しばらくは魔物が現れないことを願います」

 ……というか、また街にゴッカドルスみたいな超上級クラスの魔物が現れたら、もうどこか遠くへと住処を移した方がいい。

 魔物がうじゃうじゃといる街なんて誰も住みたくない。

「昔、笑顔がかわいいと思った女の子がいた」

 突然、レグネルは昔話をし始めた。

 レグネルがそんな話をし始めるなんて珍しい……。

 私は驚きと共に彼の方へと目を向けた。レグネルはまっすぐ外を見つめながら、話を続けた。

「エルがまだこれぐらい小さかった頃の話だ」

 レグネルは親指と人差し指で十センチほどの大きさを示す。私はふざけるレグネルに目を細めた。

「私がお母様のお腹の中にいた時の話ですか?」 

 レグネルは私の言葉に小さく笑い、「二歳ぐらいだったかな」と訂正した。

 ということは、レグネルが四歳の時の話か。……自分が二歳だった頃の記憶なんてない。

「親同士の交流で、俺と同い年の女の子がこの家に遊びに来た。静かで、賢く、他の子とは違った。人見知りする彼女に俺は話しかけていた。最初はあまり喋ってくれなかった彼女も、時間が経つと色々と話してくれるようになった。彼女の話はどれも面白かったんだ。本当に面白かった。……そして、たまに見せるふとした笑顔がとても可愛かった」

 レグネルの初恋話を聞けるとは……。

 というか、レグネルもちゃんとした恋愛をしたことがあったのね……。

「俺はエルと違って森に一人で遊びに行くことも、勇者になりたいと思って日々鍛えることもしなかったから、たくさんの人と出会ってきた」

 え、なんかさりげなく酷いこと言ってない?

 私が何か言おうとする前に、レグネルは言葉を続ける。

「それでも、心が痺れるような出会いは後にも先にも彼女だけだ」

 その声の調子で、レグネルがどれだけその女の子に想いを寄せているのかが分かった。

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