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……失敗した数は数え切れない。魔剣を作るのはそれほど繊細な作業だ。
ガンっと下の方で瓦礫が動く音がした。次の瞬間、静寂の中で響くカイル団長の声が聞こえきた。
「来るぞ」
もちろん、まだ魔剣は完成していない。
間もなくして、空気が爆ぜる音が耳に響いた。ゴッカドルスがまた瓦礫の中から高速で飛び出してきた。ゴッカドルスの身体の周りにはいくつもの魔方陣が現れる。
ヴィナスがこの短い時間で用意したものだろう。
……短時間であれほど高度な魔方陣を用意できるなんて、見事だわ。
私は感心しながらも、ゴッカドルスが出てきた衝撃波で動かぬように剣を片手で支えていた。
ここから数分間、ヴィナスが魔法で持ちこたえてくれる。それまでに何とか終わらせないと……!
「あと少し!」
私は必死の形相で剣と向き合っていた。
ヴィナスのおかげか、さっきのようにゴッカドルスが超高音で鳴くことはない。一応鳴かれることを覚悟していたから、だいぶ助かった。
それに、負傷した翼のせいで飛行の自由をやや奪われているようだ。
……スピードが少し落ちている!!
魔法言語はもう剣の先まで刻まれていた。
ヴィナスの声が「エルヴィ!」と私を急かす声が聞こえてきた。
もう終わる……。最後に気を抜けば、失敗する。今はヴィナスの言葉に答えることができない。
お願い……! 間に合って!!
すぐ近くで瓦礫が踏み砕かれる音がした。近づいてきている。私の魔力を嗅いだんだ……。
さっきのヴィナスの声は私を急かす声ではなく、心配する声だったことが分かる。ゴッカドルスは確実に私を殺そうとしている。ゴッカドルスの凄まじい殺気を肌身で感じた。
恐怖と焦りで感情が乱れそうな中、私は歯を食いしばりながら口角を上げた。
いいわ、近づいてきなさい。至近距離の方が狙いやすい。……むしろ、そっちの方が都合がいいわ!
「クソッ……。エルヴィ! そこから離れるんだ!!」
ヴィナスが私の名を叫ぶ。
…………終わった!!!
私は敬語を使う余裕もなく「分かってる!!」と声を出した。
魔法で自分の身体を浮かして、剣を握り、ゴッカドルスの方へと走り飛び乗ろうとする。ゴッカドルスは私の殺気に気付き、私からの攻撃を避けようと身をかわして超高音で鳴こうとする。
「もう遅いわ」
私は小さくそう呟いて、ゴッカドルスの左目に魔剣を突き刺す。とんでもない魔力の圧で抵抗され、全身に鳥肌が立った。腕に衝撃が走り、剣を握る手は痛む。
……押しつぶされそう。……けど、ここで退けば、死ぬ。
絶対に負けるものか!!!
私は全ての力を腕に込めて、最後まで剣をゴッカドルスの目に刺し込んだ。




