108
「分かった、その作戦でいこう。ただ僕の魔力でも、数分が限界だ。それ以上は奴に僕の命を差し出すことになる」
「数分で充分です。むしろ、余るぐらいです」
「魔剣を数分で作れるなんてね……。エルヴィ、君は本当に驚かされるよ」
えへッ。
私は心の中で頭を小さく搔きながら照れる。もちろん顔には出さない。
「そういえば、カイルには作戦を伝えておかなくていいのか?」
思い出したようにヴィナスはそう言った。
…………カイル団長に伝えるか否か。……う~~ん。どうだろう。いや、大丈夫でしょう!
「きっと、察してくれます」
私ははっきりとした口調でそう言い切った。
しばらくの間ずっと訓練を共にしたカイル団長なら、私の作戦を分かってくれるはず。……多分。
またゴォォンと建物が壊れる音が聞こえた。足元がぐらっと揺れて、体勢を崩しかける。すぐにヴィナスが私を自分の体に寄せる。
そして再び、ゴッカドルスが崩れていく建物の中へと凄まじい速さで入って行った。
これって、抱きしめられているよね……?
ドキッと心臓が飛び跳ねてしまう自分が嫌になってしまう。もう婚約者でもなんでもないのに……。ときめいてどうするのよ。
ヴィナスと接触している部分から、彼の温度を感じた。
「ありがとうございます」
私は自分を律して、ヴィナスから体を離す。
……落ち着きなさい、エルヴィ。ただ支えてもらっただけ。
ゴッカドルスのことだけに集中するのよ。ゴッカドルスに恋をしたと思って、考えるのよ。
意味の分からない平常心の保ち方をする。
ゴッカドルスは暗い場所を好む。超高音で鳴くのは相当な魔力を消費する。鉤爪で建物を壊す何百倍もの体力を使う。
超高音は虚しくも私の魔法で防がれ、更には翼を燃やされた。そして、翼の回復に相当な魔力を注いだはずだ。もちろん、傷は完全に癒えていないだろうけど。
ヴィナスの魔法だもの。この一瞬じゃ、無理。完全回復まで数日はかかる。
今、ゴッカドルスは塞がれた瓦礫の下で場所で魔力をため込んでいるはず。ゴッカドルスは魔力の消費が早い分、回復もめちゃくちゃ早い。
またすぐに飛び出てくる。
そんなことを考えていると、本当にヴィナスに対してのドキドキは薄れていった。
……やっぱり、意識を違うことに向けるって大切!




