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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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 目の前の敵に集中しないと……。気を抜いていられる相手じゃない。

 私の魔法でゴッカドルスは鳴くのをやめた。空間を震わせるような甲高い音から解放される。

 ……良かった、うまくいった。

 ゴッカドルスの鋭い眼光がこちらへと向けられそうになった瞬間だった。バンッと破裂音が空から聞こえてきた。ゴッカドルスの翼に炎が付き、瞬く間に燃え広がる。

 己の翼の炎を鎮火させるのにゴッカドルスは意識を取られている。こちら側にほんの少しだけ余裕ができる。

 あの魔物に対して、魔法を仕掛けることができるのはただ一人だけ……。

 ゴッカドルスの様子を眺めていると、突然誰かに腕をグッと力強く引っ張られた。

「エルヴィ、どうして君がここにいるんだ」

 目を見開いたヴィナスがいつもよりも荒い口調でそう言った。

「……ヴィナス様」

 彼の名を小さく呟く。

 …………てか、一体いつ屋根に上ってきたのだろう。全く気配を感じなかった。それはあまりにも私がゴッカドルスに気を取られていたせいかも。

 私はそんなことを考えながら、ゴッカドルスを指さして、ヴィナス様の言葉に答える。

「魔物を倒しに来ました」

 ヴィナスと話すのは婚約破棄されたぶり。なんだか久しぶりだわ。再会のハグでもした方がいいかしら……? 

 いや、やめとこう。今は時間もないし、なにより私は「元」婚約者。

 ヴィナスは少し困惑しつつも、私がここにいるという状況を受け入れながら口を開く。

「あれは君の手に負えるような」

「知っています。……けれど、ヴィナス様も手こずっているでしょ? 説教だったら後でいくらでも聞きます。とりあえず、今は少し力を合わせませんか? 私に作戦があるんです」

 ヴィナスの言葉に被せるように私は強気でそう言い切って、微笑んだ。

 本来なら超上級クラスの魔物の威圧を感じながら、笑う余裕などない。……けど、気持ちが後ろ向きになる方がもっと嫌だった。 

 ヴィナスは一呼吸おいて、「分かった」と納得する。

「そうこなくっちゃ!」

「だが、どうするつもりだい? 一筋縄ではいかない強敵だ。これまでに現れた魔物とはわけが違う」

「ですが、こちらには勇者と補欠勇者がいます」

 私は即座にそう言うとヴィナス様が小さく吹き出した。

「自分のことを補欠勇者と言うのか」

「ええ、もちろん。実際そうでしょ?」

 私はヴィナスに笑いかける。一拍置いて、少し真面目な口調で言葉を加えた。

「それにどれだけ絶体絶命な状況だったとしても、『誰かが戦わなくちゃ』です、おねえちゃん」

 ヴィナスは瞬きを忘れて、私をじっと見つめた。すぐに彼はふっと表情を柔らかくして「今回は二人で戦うのか」と口を開く。

 私は力強く頷き、ゴッカドルスを倒す作戦を説明する。

「ヴィナス様は魔法でゴッカドルスの気を引いてください。ヴィナス様ほどの魔力があれば、ゴッカドルスは必ず反応します。ヴィナス様に気を取られてる間に私がゴッカドルスに近づき、剣で視覚を奪います。そのまま地面に落として、とどめをカイル団長に刺してもらいます」

 単純だが、完璧な計画だ。

 打倒ゴッカドルス! ついに完結!

 私が全部を説明すると、ヴィナスは眉間に皺を寄せながら少し考え込む。

「奴の目には強い魔力が宿っている。普通の剣だと役に立たない」

 よくぞ聞いてくれたわ!

 私はニヤッと笑みを浮かべて、声を発した。

「私は補欠勇者ですよ? 剣を魔剣に変えるぐらいできます。その間、時間稼ぎをお願いします」

 剣を魔剣に変えるなど、同年代にできる者はいないだろう。

 ハッと感嘆するようにヴィナスは瞳を大きくさせた後、「君は僕が見てきた勇者の中で最も有能だよ」と言葉にした。

 その言葉が最高の誉め言葉だった。なんてったって、勇者に褒められているのだから。

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