表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/142

104

 ヴィナスが強いことは重々承知だ。だけど、今はそんなこと関係ない。

 魔物を倒さなければならないという気持ちが先行していた。ヴィナスが来るというのなら、なおさらだ。私なら彼をサポートできる。

「何のために勇者の試験で落とされたんだ!」

 レグネルは声を荒げた。その声にリーシャがビクッと小さく身震いをして、目を見開く。

 何のために勇者試験を落とされたか? そんなの知らない。

 ヴィナスが勇者になったから、私が勇者になれなかった。私は勇者になるはずだったのよ。

「通して」

 私はなんとか平常心を保ちながらも、魔力を静かに放った。私の鋭い眼圧と対抗できない魔力でレグネルは顔を顰める。動けないでいるレグネルの隣を私は通り過ぎた。

 レグネルは低い声で部屋を出る私に向かって口を開く。

「……死ぬかもしれない。……ずっと勇者になることに対しての怯えはあっただろ?」

 流石兄だ。私のことをよく知っている。

「怖いという感情を無理やり押し込める必要はない」

 レグネルは続けてそう言った。

「…………もう怖くないの」

 私は最後にそう言って、この場を離れた。

 本心だった。自分が死ぬことよりも、ヴィナスが死ぬことの方がもっと怖い。

 髪を一つに結びながら、駆け足で屋敷を出た。「バロン!!」と馬の名を叫び、口笛を吹く。それに反応して、馬小屋からバロンが私の方へと走ってくる。

 私もバロンに駆け寄り、そのまま飛び乗って手綱を握る。そして、街へと疾走した。



 エルヴィが馬に乗って、去っていくのをレグネルとリーシャは窓から眺めていた。

 後頭部高くで結ばれた鮮やかなオレンジ色を靡かせ、ドレスだというのに馬に跨る様子に二人とも目が離せなかった。

「……かっこいいですね」

 リーシャがそう呟くと、レグネルは「ああ」と小さく頷く。

「どうかご無事で……」

 リーシャの澄んだ声が静かにレグネルの耳に響いた。レグネルはその声をどこか懐かしく思いながら、ゆっくりと口を開いた。 

「…………久しぶりだな」

「お久しぶりです。レグネル様」

 レグネルの言葉に反応して、リーシャの目尻がわずかに緩んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ