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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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 敵うわけがないと言われたけれど、リーシャが私の何をそれほど買ってくれているのか分からなかった。 

 それから、リーシャと暫く他愛もない話をしていた。まるで昔から仲の良い女友達のように。

「そういえば、最近は家にこもって何をなさっているのですか?」

「……勉強ばっかりよ」

「勉強ですか……?」

 私の返答にリーシャは不思議そうな表情を浮かべた。私は「そう」と頷く。

「誰かとこんな風にゆっくり会話するのも久しぶりだもの」

 そう言って、あくびをする私にリーシャは心配そうな目を向ける。

「無理しないでください」

「ありがとう。……無理はしているつもりはないのだけど、ちょっと寝不足が続いていて」

「…………何についての勉強をなさっているのですか?」

「う~ん、主に地理と魔物についてかな」

「地理と魔物……」

 リーシャは私の言葉をオウム返しする。

 私はあえて抽象的に言って、話を誤魔化す。特に「地理」に関して。

 最近、私は父親の書斎に忍び込んで極秘情報を手に入れた。「ガルロット族の滅亡」だ。

 どうやら資料によると、少し前にガルロット族はモリート族の襲撃に遭い、滅亡したそうだ。一つの国の中でそんな凄惨な争いが起きている。安寧なジェガナ国で生きている私には到底想像できない。

 もちろん、ちゃんと資料を読んだ後は元通りに片づけておいた。私が忍び込んだなんてバレていない。

 リーシャは「そういえば魔物で思い出しましたが」と話し始めた。

 良かった~~~、リーシャが魔物の話題の方に食いついてくれて!!

 リーシャなら絶対に魔物の方に焦点を当てると思ったのよ! 

 地理について聞かれたら、正直困っていた。ミナジェス山脈の地形について適当に話すことになっていたに違いない。

 私は胸を撫でおろしながら、リーシャの話を聞いた。

「魔物を退治してる勇者って誰なんでしょう……。なぜか今年の勇者はまだ明かされていないんですよね。毎年、勇者になった者は果敢に魔物と戦って命を落としています。それなのに、勇者の死後も魔物は退治され続けています」

 ……鋭いな。いい着眼点だ。

 リーシャは一呼吸置いて、声を落とした。

「……表に出ず、裏で働く「真の勇者」がいるって国民の中で騒がれています」

「真の勇者?」

 思わぬ単語に、私は眉間に皺を寄せて、表情を歪めてしまう。

「これは前から言われていたことなんですけれどね」

 急に彼女の声のトーンが戻った。

 …………真の勇者なんて全く知らなかった。勇者試験を受けた身としてまずくない? 

 巷の話題や噂にあまりにも疎すぎる。

いつも読んでいただきありがとうございます! すごく嬉しいです!

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