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プロローグ

【クロフォード学園】の屋上にて、たった一人の男に俺の手下たちは蹂躙されていた。








そいつの名はオーエン・ゼネオルシア、気弱で、ノロマで、親無しで、弱者。








その癖俺等がおもちゃを傷つけるといつも出しゃばってくる生意気な奴。








俺たちのかわいがりに耐えられず、勝手に一度死んだ馬鹿。








力もないくせに出しゃばってくるマヌケにはお似合いの結末だろうに、あいつが死んだ時は俺達が悪いみたいにぎゃーぎゃー大人達に喚かれたのは最悪だ。言ってしまえば弱肉強食の摂理に適応出来なかったあいつが悪いのに、俺達が悪いとかレッテルを貼ってきやがって。マジでこっちが被害者だわ。








まだまだたくさん楽しんでやる予定だったのに死んで逃げられるとか最悪だった。それでもお優しい俺はあのゴミの為に葬式を挙げてやった、葬式の場でふざけるのが目的だったが。








だが、奴は、死後、一回だけ、灰となってから、爆発的に能力を上げ、蘇生する、“灰人”なる特異体質を持っていた。








蘇生後力を得て調子に乗ったのか、生意気さをさらに増し、逆らってくるようになってきやがったこいつを呼び出し、締め上げてやろうとしたんだが……








結果はご覧の有様だ。ボロ雑巾の様にされ地面に転がっている。使えねえ奴らだな、オイ。








そして今、無能共に反撃をして、人生のピークにいるであろう馬鹿がオーエンだ。死ぬ前の気弱そうな目は嗜虐心にまみれた三白眼に、小さかった声は下品な大声に変わっている。








うめき声をあげる仲間の体に跨っていた野郎が立ち上がる。








跨がられていた男は小指を踏みつけてへし折られ、ぐりぐりと地面に押し付けられていたせいで、指が肉片とくだけた骨に分解され、混ざりあっていた。








「ギャハハハ!!劣等種のガキどもが数揃えりゃ勝てると思ったか?なぁ!なぁなぁなぁ!」








ヘラヘラと他人を馬鹿にした笑みを浮かべたオーエンが両手をポケットに入れながらゆったりとした足取りで近づいてくる。












「ははっ、馬鹿が。そいつら全員合わせたよりもずっと、ずっと俺の方が強いんだよ、お前も前みたいに、顔が倍に腫れ上がるまで殴って、素っ裸にして、晒し者にしてやるからなぁ。安心しろよ、【大癒】かけられれば治るからよ、心の傷までは治んねえけどな。」








しかしこいつなんでこんなにマジになってやがるんだ?理由は何なんだ?こいつの飼っていたペット達を一匹一匹嬲り殺しにした件か?意識を失うまで殴って川に簀巻きにして放り投げた件か?別のおもちゃを庇いやがった時に制裁として髪の毛を焼き払ってハゲさせた事か?何にせよ言いたいことがあるなら言葉で言えよ!男らしくなぇな!








怒りと共に起動する。物理でも魔術でも無い第三の力、選ばれた者のみに許された特殊能力スキルを。








【獅子の猛炎フレイムレオ!】








起動したのは俺が保有する三つの起動型スキルの中でももっとも使い勝手が良いスキル、フレイムレオ。




摂氏500度に達する獅子の形をした炎を打ち出すスキルだ。




獅子と同サイズの炎の塊が、相手を追尾し、亜音速で突っ込むという性質による当てやすさ、獅子に接触しない限り何もこの術は影響を及ぼさないという辺りを巻き込まない特性もそうだが、何より直撃しても即死させずにまとわりつくという性質が気に入っている。








この世でもっとも苦しい死に方焼死らしいが、これを受けた人間の顔をみるとそれは真実だと確信できる。








これを受けた馬鹿は、燃え盛りながらも言葉にならない声を上げ、のたうちまわり、全身で苦しい、という感情を表現してくれる。








一度オーエンに撃ったが、その時の奴の反応は傑作だった。なんだよ「ぷわっ」って、どういう悲鳴だよ。








その時の事を思い出して思わず笑いが漏れるが次の瞬間炎が掻き消えた。








は?








疑問に思う間もなく10メートルは離れた位置にいたあいつの拳が俺の顔面に突き刺さっていた。へし折られた歯が喉に詰まる。








「ゲホッ!ゲホゲ……」




ボディブロー、アッパー、フック、ジャブ、ストレート、殴られる。殴られる。殴られる。殴られる。








この俺が、殴られている!?








戦士としても魔術師としてもクロフォード学園学年1位の俺が?








クソが!








お前を一番殴っていたのは俺だろうが!じゃあずっと殴るのは俺でなきゃ理不尽だろうが!怒りによって魔力が滾る。








実家の金に飽かせて身に纏った魔術紋、第一から第五まであるそれらを一斉に起動。第一第二は筋力を、第三は敏捷性を、第四は動体視力を、第五は耐久力を上げる効果のあるそれらが俺の体を書き換える。








極限まで強化された俺の肉体を使い、音すら置き去りにして拳打を放つ、これは比喩では無い。前進しながら拳を振るえば、一つ前の拳打が空気を切る音が後方から鳴るのだ。








本物の強者の拳って奴を、思い上がった中途半端な強者もどきに見せてやろう。そう思って突き出した突きはするりとかわされた。クソが、まぐれで避けやがって。そう思い10発以上追加で突きを繰り出したがまぐれでは無かった。奴の目は俺の拳をしっかりと捉えているのだ。








嘘だろ、大迷宮四層の相手すら葬った拳打だぞ








「怒ってスーパーパワー覚醒ってか?ギャハハハ、こわーい」








にへらにへらと奴は笑いを浮かべた




霞を殴っているかのように攻撃が一切当たらない。




クソ!クソクソ!クソクソクソ!




ぶっ殺してやる!








次の瞬間天が落ちる。いや、アッパーカットを食らった俺が強制的に真上を向かされただけだ




顎への鈍痛と衝撃がそれを教えてくれる。




喉にへし折れた歯が詰まり苦しい。




「ガ……ァ……クソがぁちょっと可愛がったただけじゃねえか。それに何マジになってんだよ」




「今度は俺がお前をちょっと可愛がるんだよ。」








相も変わらず不快な笑みを浮かべながら訳の分からない事を奴は言った。








「殺してやる……」




OK、お前の格闘能力が高いのは十分わかった。恐らく俺以上の領域にまで来ていることも。だが俺の本職は魔術師だ。




殺意を胸に呪文を唱える、俺の切り札とも言える魔術を起動するために。








そうしたら奴の蹴りが飛んできた。空中できりもみ回転をしながら吹き飛んだ俺はべチャリと地面に転がった。








「おお恐ろしい恐ろしい。殺しなんて悪い事をするのはこの手ですか」




右手を踏みつけてくる。折れた。痛みで声にならない悲鳴が喉の奥から吹き出す




「それともこの手ですか」左手がへし折られる。痛みで目に星が飛ぶ。




「はたまたこの足ですか」右足が踏みつけられへし折られる、屈辱で涙が出てくる




「もしくはこの足ですか」左足が踏みつけられへし折られる。痛みのあまり嘔吐しそうになる。。




「それならこの口ですか」口もとへ膝蹴りが飛ぶ。吐瀉物と歯が噴水のように口から出た。








「ギャハハハ!!どこだよ!どこのパーツ使って殺すんだよ!黙ってちゃ分かんねえよ!」








こいつ、俺等がこいつにした事を返して来てやがる!




弱虫オーエンの癖して復讐者気取ってんじゃねえぞ!








四肢を破壊されて立つこともできなくなったが俺は魔術師だ、こっから切り返す方法なんていくらでもある。








「は、はは、この国では弱肉強食が正義なんだよ。なのになに逆恨みしてんだよ、ばーーーか!」




「クソみたいな考え方だな。じゃあいまお前らにしてる事も問題ないよな」




「はぁ!どう関係があるんだよ!」








そう言うと野郎が俺の顎を掴んでぐいと顔を近づけてくる








そして奴は奴自身の顔を指差した。




「俺強者」




それから俺の顔を指差してきた




「お前弱者」




「はぁ?」




俺はいつも強者側!食らう側、奪って、冒して蹂躙する側だ!








「お前らは弱者なんだよ、じゃーくーしゃ!」








よし、決めた、殺す








発動するのは黒魔術系統第五位階【大凍】




大迷宮5層、迷宮最強の魔物と呼ばれる【グレーターデーモン】。




そいつの得意技である、魔術の中で上から二番目の攻撃力を誇る大魔術。




クソ野郎は僅かに驚いたような表情を浮かべた。




絶対零度すら下回る白銀世界、音すら凍り命が砕ける美しき地獄。




空間魔術を絡め効果範囲を限定していなければ校舎の半分は凍結していただろう。これこそが俺を天才たらしめる最大の理由だ。




基本的に回避不能である魔術が、あいつの元を通り過ぎた跡には巨大な氷塊が出来ていた。よっしゃ!死んだ!




殺してしまったが所詮孤児、親父の権力を以てすれば揉み消せる。










「ハハハッ。あー、クソ。もっと痛めつけてから殺しときゃ良かったな」








しっかし人殺して全く動揺して無いとかやっぱり強くないか、俺?




興奮で脳内麻薬がドクドクとでているのを感じる。




おっと脳内麻薬が切れる前にとっとと【大癒】で治療を受けないと相当痛い思いをすることになるな。








そして魔術で出来た氷が、効果時間が切れた事で崩壊する。




その中から原型すらとどめていないだろうという俺の予想を裏切り、無傷のオーエンが出てきた。




そして奴の周りには透明な膜のような物が張られていた。




対魔術結界?人間には習得がほぼ不可能なあの技術をなぜコイツが?








おかしい、灰人が蘇生した時の成長を考慮してもこいつの戦闘能力は異常だ。ま・る・で・別・人・が・成・り・代・わ・っ・て・い・る・か・の・よ・う・だ・








駄目だ、こんな事今考えるべきでは無い、脅威を排除しなくては。




【大凍】の使用回数はまだ2回残っている。連射が可能なのが魔術の強みだ。二発目を撃とうと手を翳す。








直後奴の影が僅かに揺れたかと思うとニタニタとした顔が目の前に迫ってきていた。








「スザク……だっけ、なんで弱肉強食がクソだか分かるか?」




俺の顎へ奴の蹴りが突き刺さる。




スタスタと奴が俺の背中を踏みつけ乗っかった。




「答えはこうなるからだよ!」




「痛い!痛い!痛い!」




「痛くしてんだ、当たり前だろ」




足の折れた部分をぐりぐりと踏みつけてくる。焼けるようなと言ってもまだ足りない、焼けた鉄串を何本も突き刺される様な異常な激痛が足の中を暴れる。その上あろう事か折・れ・た・足・を・踏・み・つ・け・な・が・ら・前髪を掴んで持ち上げ俺を立たせてきた。痛みで転げ回りそうになり暴れるが、がっしりと俺の髪を掴んだ奴の手はピクリとも動かなかった。伝わってくる体温がおぞましくてしかたない










「スザクくぅん?これがお前の大好きな弱肉強食って奴だ 死ねぇ、弱者」




弱者の尊厳を踏みにじるのが楽しくてたまらないとも言わんばかり醜い笑顔と共に腹に強烈なボディブローがねじ込まれ、直接胃を掴まれて外に引きずり出される様な衝撃が俺を襲った。




クソが、殺してやる。激痛すら越す激情の中俺の意識はブラックアウトした。














































次の瞬間眼球に入ってきたのは焼けた針




「ギャアアアアアアアアアアアアアア!アッアッ!アーッ!」




ぐりぐりと眼窩を針はほじくり回す。




「なに寝てんだよ、俺死ねって言ったよな。死ねって言われてんだからちゃんと死ねよ」




「あ……ぁ」




「スザクちゃんが自らの意思でちゃんと死ねるよう、今からしっかり痛めつけてやるから、しっかり痛がれよ」




殺意と激情が物凄い勢いで恐怖に変わっていく




オーエン・ゼネオルシア、こいつは悪魔だ。








しかし俺はこの後真に知ることとなる。こいつは悪魔なんてかわいらしい存在では無かった事。こいつに敵対した事は、龍・の逆鱗に触れるのに等しかったという事を。

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