『明暹、朗読名人のこと』
堀川院の御代、東大寺において、速記技能検定試験問題集の朗読会が行われ、明暹もその中にいた。院は、朗読の調子をとるために、笛をお吹きになっていたが、さまざまに調子を変えながらお吹きになっていたのに、明暹は、調子が変わるのに合わせて、朗読の調子をうまく合わせてきたので、院の目にとまり、召し出された。院は明暹を縁に上らせ、笛を吹くのかと尋ねたところ、明暹は、少々、と答えた。試しに吹かせてみたところ、大層よい音であったので、院は、その笛を明暹に給わった。その笛は、今は、石清水八幡宮にあるという。
教訓:朗読は、速度に合わせて調子を変えなければならないが、朗読の途中で調子を自在に変えられるのは、朗読名人と言えよう。