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第八話

 



 この日、少年はこの世界で成人となる15を迎えていた。

 成人を迎えることはどの国、どの世界でも特別な事。その特別な日に、少年は自身の手で特別な華を添える。




 朝日が昇る。

 この小さな村には二十軒ほどの家が、一致団結というほどではないが、協力しながら暮らしている。

 ある家は田を耕し、ある家は畜産を営み、ある家はそれらの纏め役をしている。

 その纏め役の家は村長宅。身分は同じ平民である事から、特段権威があるわけでは無い。

 しかし、自由に出来ることが多く、やはり財も集まりやすい。

 その象徴が奴隷。村長家は代々当主になる時に町に奴隷を買いに行くという、()()があった。

 元は大変な田舎暮らしをする村民の、不満を溜めすぎない為に購入したとされるが、今は形骸化され、本来の用途はほぼ成していない。


 そんな奴隷の母を持つ少年は、幼い頃より誰にも守られず、誰からも邪険にされて育った。

 二歳の頃までは母と共に寝起きしていたが、奴隷の母からは愛情というものは貰えなかった。

 貰えたのは生かすための母乳と、嫌悪を目一杯込めた視線のみ。


 誰しも好き好んで奴隷に身を落とす者はいない。少年の母は十代の時に親に売られ、店で買われてここへとやって来ていた。

 そして自身の親よりも年上の、村長の慰みものになる日々。そして身籠る我が子。

 憎く思われて当然だと、少年も理解していた。


 そんな少年はどれだけ酷い扱いを受けようとも、誰も憎んでいなかった。

 いや、憎む価値すら見出せなかったのだ。




 少年は血溜まりに一人立っている。

 辺りには老いも若きも、男も女も関係なく、乱雑に重ねられていた。

 その中には自身の母であったモノも含まれている。


 集めたのには理由がある。処分するためだ。


 村人の死体を集める前に、少年は村中の財を掻き集めていた。

 それが終わると汚れる事を何とも思わず、死体を村で一番大きな家、村長宅に運んだ。


 次に村の家を全て破壊し、出来るだけ村長宅に集める。

 それが終わるとなんの感慨もなく、火を放った。


 火は瞬く間に広がり、辺りに熱風を撒き散らした。少年はすでにその場にはいなくなっていた。












「登録」


 言葉足らずな物言いでも、接客する者は普通に対応せざるを得ない。


「はい。年齢、名前を教えて下さい」

「15。レイン」


 名もなき奴隷の子はレインと名乗った。


 戸籍などないこの国では、身分証は数少ない己を表す物の一つ。

 魔物狩り組合に登録すると組合が身分を証明してくれる。といっても、その街出身という事がわかる程度のものだが。

 組合に登録し、その身分を保証してもらうという事が大切なのだ。


 普通の町人や村人には身分証など必要がない。その理由はただ一つ。この世界には魔物と呼ばれる規格外の強さを誇る生き物が生息しているからである。

 故に普通は町を出たり村を出たりはしないので、身分証の価値が生まれないからだ。


 魔物狩りは、自分にあった強さの魔物が出る街を目指す為、移動は時々行う。

 大きな街では、魔物が入らないように外壁や堀に守られていて、門番の顔見知りか、身分証がないと入る事は出来ない。

 お金を払えば入れるが、平民には安くない金額設定にしてあるのだ。

 これは町民の流出入が悪戯に起きない為の政策でもある。


 新たにレインとしての身分証を受け取った少年は、とある店を目指した。

 奴隷商だ。


 そこで先ず一人の奴隷を買った。

 しかし、その奴隷では少年の欲しいものは手に入らず、お金を貯めて新たな奴隷を求めた。


 そして更にもう一人。

 三人の奴隷を手にした少年は青年になっていた。

 その三人を買ってはみたが、やはり求めるモノは手に入らず、ただの性欲処理と身の回りの世話をする道具として使う事にした。


 そして武力と財力を求める青年は、ニールの街へと辿り着いたのだった。

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