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アユムくんとアユミちゃん  作者: つりぃ
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プロローグ

初めての投稿です。

 入学式。それは人生で最も大切なイベントだ。そう、『友達作り』という工程があるのだ。


 自己紹介も終え、今は式までの空き時間を各々楽しんでいる。少し周りを見てみよう。


 黒板の前に固まって話しているのは、ザ・一軍といった男女五人グループだ。ああいう人たちは、小学校、中学校でも自然と周りに人が集まってきて、「友達たくさんいます」と堂々と言えるタイプだろうな。


 後ろの窓際で固まって騒いでいるのは、坊主や短髪の男三人組。高校でもこういう人たちはいるものなのか。いったい何がそんなに面白いのかは、私には絶対理解できない。


 だいたいこういう時は真ん中の後ろの席で、誰にも話しかけられずに一人寂しそうに座っているひとがいるものだ。そう、私のようなね。



 まずいまずいまずいまずい……。さっきあんなことしちゃったからだよ絶対。誰かお願いだから話かけて。


「ねえねえ」


 男子の声だ。私の救世主、到来か? って、さっきの男三人組の一人じゃん。しかも私がこうなっている原因のやつだし……。


「お前、俺のこと好きなの?」

 は?



 一時間前


「アユミ、ねぇアユミってば」

「あ、ごめん。少しぼーっとしてた」


 推しと××する妄想をしてたなんて言えるわけがない。


「もう、アユミって昔からそういうところあるよね」

「あはは……。高校では気を付けるようにするよ」


 そう明るくふるまって隣を歩いてる女子は、「山下 (あおい)」。私の小学校からの同級生だ。正直言って、めちゃくちゃかわいい。


「なぁ、あのショートヘアの女子、バリかわいくね?」

「ああ。俺あの子にアピールしまくろうかな」


 入学式の日からでも聞こえる男子のしょうもない、会話はいつもスルーしている。


「アユミは何部に入るか決めた?」


 葵にはいつもその会話は聞こえてないらしいけど。


「いや、まだなんだよね」

「なら、私と一緒にテニス部入らない?」

「運動部は私には……」

「大丈夫だって。アユミ、絶対センスあるもん」


 小学校の運動会のリレーで、ずっこけてビリになった時以来、私は運動が大の苦手だ。


「今度一緒に仮入部行こうよ、ね?」

「あー、考えとくよ」

「りょーかい! あ、もうついちゃったね」


 葵と話しているうちに、もう高校に着いていたらしい。昇降口にはすでにクラス名簿が掲示されている。


「えーっと、山下山下……。あっ、三組だってー! アユミはどうだった?」

「一組らしい」

「そっかー、じゃあここで一回さよならかぁ。」


「お前、三組なの? ということは、葵ちゃんと一緒じゃんかよ! いいなー」


 相変わらず、しょうもない会話が聞こえてくる。


「じゃあ、アユミ。また、帰りいっぱい話そうね」

「うん。バイバイ」



 教室に着くと、すでにほとんどの席が埋まっていた。みんなソワソワして、結構早く来てしまったのだろう。


 教卓には眼鏡で短髪の中年の先生が座っている。定番だ。


「お、これで最後か。君の席はすぐ近くのそこだな」


 ただ一つ、誰も座っていない席に座ると、先生が黒板の前に立った。


「まだ時間じゃないんだが全員いるから、さっそく自己紹介をしていくか」


 自己紹介か。だいたい、クラスに一人は寒いギャグをする男子がいるんだよな。


「まずは先生からだな。先生の名前は『小野寺 竜生(たつお)』 竜に生きるでタツオな。まあ、いいクラスにしていこうな。」


 情熱系でもやる気がない系でもない、普通が一番似合う自己紹介だ。


「じゃあ、次は君たちだな。出席番号順に頼んだぞー」


 主席番号ってことは、今の席順だから私は真ん中くらいか。まあ、気長に待とう。



 数分後


「よし、次の人ー」


 私の前の人だ。褐色系の肌で、つんつんの短髪。わんぱくって感じの男子。


「えー、本馬南中学出身、『佐藤 (あゆむ)』です。歩くって書いてアユムです。野球部入りたいと思ってます。よろしくお願いしまーす」


 意外と普通の自己紹介だな。一発ギャグとかやりそうな感じなのに。


「急ですが一発ギャグやりまーす」


 ですよねー……。


 自己紹介の一発ギャグは、ウケるのが一番いいだろうけど、それは難しい。めっちゃ寒いギャグだったら、スベって逆に面白いみたいな雰囲気になるからまだマシ。最悪なのは、中途半端でなんもリアクションがないやつだ。


 この人はどうなるのか。


「エビの血液型はAB(エービー)型」


 ダジャレ……。しかも、少し好きな人が知ってそうなレベルのやつ。これは、最悪パターンだな。


「ちなみに僕はB型です」

「……ぷっ」


 やばい。少し面白い。


「あははっはははっはははっははっはっははっははっはは! あはっ……」


 しまった。やらかした。

 当然だけど、私以外誰一人として笑っている人なんていない。冷たい刺さるような目線は気のせいでありたい、ありたいんだけど……。


 なんで言った本人まで、引くような目で私を見てるの!

 そこはもうちょっとフォローしてよ。


「あー、まあ、次いくぞ、次」


 少しあきれたような声で先生が仕切りなおす。


 次って私か。ここはちゃんと謝っておくか。


「先ほどはすみませんでした……。本馬東中学校出身、『佐野 (あゆみ)』です。これからよろしくお願いします。」


 言い終わった後の拍手も少し小さい気がする。はぁ、友達できるかな。



「これで全員終わったなー。多分もうそろそろ移動になるだろうから、準備しとけよー」

「小野寺先生、少しこちらへ」


 他のクラスの先生だろうか。何か伝えているようだ。


「えー、みんな聞いてくれ。少しトラブルがあったらしく、式の開始が十五分遅れるそうだ。だから、それまで自由に話したりしてていいぞー」


 まさか、この状況で自由時間という、地獄が来てしまった。



 そして、今に至るわけである……。




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