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根幹を揺るがす

 

 彼女の声に、目を閉じて深く呼吸をしたシュヴァイツはそのまま一人闇の神に近づいて行く。


 獣のように前面に突出した鼻筋に皺を寄せた闇の神が、フィエルンに向かって大きく口を開いた。そこからどす黒い球状のものがわだかまり、いきなり放たれた。

 聖女への罰を下すつもりだ。


 正面からそれを切り刻んだシュヴァイツだったが、同類の力では消滅させるまでには至らず、刻まれた分細かく無数の液体のようになったものがフィエルンに降り掛かってきた。


「今はもう受ける気はないわ」


 施された魔王の防御膜が侵食を防いでくれるのを見たフィエルンが、聖女の力で次々と蒸発させる。


「どうすれば」


 一方地上からでは何もできずにエスタールは途方に暮れて見ているしかままならなかった。すると思いがけず、こちらを見下ろしてきた魔王と目が合った。


「そこの人間、フィエルンを守れ」

「な、何?」


 足元を風のようなものに攫われたと思ったら空中に浮かんでいる自分にエスタールは驚いた。


「少しの間俺は動けなくなる。貴様が死んでも守れ」


 魔王に何かされたのは直ぐに分かったが、隣に浮かぶフィエルンも驚いたようだった。


「シュヴァイツ?」

「俺が闇の神の分身だと忘れたか?」


 そう言うと、シュヴァイツは自らの唇に指を置いた。


「力をかなり奪っているから、お前は無理をするな」

「な····」


 エスタールは頬を赤く染めるフィエルンを見て、わざと見せつけているのだと分かった。


 どこまで傷を抉るんだ!


「ふざけやがって」


 再び襲いかかる神の攻撃を聖剣で薙ぎ払い、エスタールは魔王の背中を睨み悪態をついた。闇の力には聖剣の攻撃が利きやすいようだ。


「ルル」


 横からフィエルンが聖剣の刃に指を触れた。すると刃の淡い輝きが強くなる。


「ルルに力を分けたから、きっと扱いやすくなるはず。でも気を付けて」

「あ、ああ」


 ぐっ、と唇を噛み、フィエルンは更に闇の神に近づいて行く魔王を見つめた。


「私はシュヴァイツを援護するわ」

「あいつは何を?」


 闇の神の鼻先にまでシュヴァイツが来ると、ふいに彼から立ち昇っていた昏い光が神の方へと吸い込まれていく。


「俺を吸収する気か。だが不可能だ。神よ、俺が貴様を取り込んでやる」


 両腕を広げるようにしたシュヴァイツは、にいっと嗤った。


「その力、全て差し出せ!」















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