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一人にしない

 

 驚愕するフィエルンの青い目に、数多の飛空挺の砲撃を受けた神が当たった部位から光が削られていく様子が映った。火の粉を飛び散らせるように閃光が走り、その度に神が身を捩る。


「攻撃が効いてる?」


 神に人間の力が及ぶことがあるなんて。

 これ程の数、ローレンシアが世界中に呼び掛けたに違いない。


 光の神の信仰を司る彼らが、こんな行動を起こすとは信じられない。

 それに彼女の前でこの瞬間もエスタールは神の罰を防いでくれている。神自身が彼に託したはずの『ルル』を用いてだ。


 矛盾している。でも無意味に見えることにも何かしら意味があるのだ。


「愚かなことを」


 腕を再生したシュヴァイツがフィエルンの肩を掴んだ。


「人間が神に盾突くなど有り得ない、それも光の神に。お前も何をやったのか分かっているのか?」


 思いがけず彼の動揺した顔を見ることができた。至る所血で汚れてはいるが、上半身は傷跡もなく回復していた。まだ脛から先はなく手で重心を保っている。


「血迷ったのか?どんなことになるか分からないのだぞ」


 彼が理性的に見える日が来ようとは。のしかかるようにされて、ひっくり返りそうになるのを手を付いて堪えていたフィエルンは笑い出したい気分だった。

 やはり自分は血迷っているのかもしれない。

 

「そうね、でもいいの」

「俺が罰を受けていれば済んだことを、これがお前の望むことだと?」


 少し違う。でも気分は良い。


「あなたが罰を受けるのを私が平気で見ていられると思っていたの?」

「罰を受ける気だったお前が言うな」


 憎々しげに吐き捨てたシュヴァイツがフィエルンの顎を掴んだ。


「人の身で罰を受けられるはずがない。そんなことも分からないのか!」

「うん、ごめんなさい。だからこそこれでいいのよ」


 あくまで仮の姿の神を消し去ることはできない。もし可能だとしても、それは世界の終焉を意味する。

 ここにいて戦う者達は、ただ自らの意志を示しているに過ぎない。神はそれを判じて決定を下すだろう。それが『試練』


 フィエルンは晴れやかな気持ちだった。

 もう聖女として生まれ変わることはないだろう。もしかしたら転生すら許されず魂を消滅させられるかもしれない。


 でも今までとは何かが変わる。


「ねえ、シュヴァイツ」


 彼の顔に手を宛てがうと、同じようにしていたテネシアの記憶が蘇る。

 本当に好きだった。自らの神を慕うよりも遥かに、シュヴァイツのことを想っていた。


「もう一人にしないから。だから、あなたも私を置いてはいかないで」


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