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光の神と魔王

 光で構成されたかのような姿は、この世界に現れる為の仮の姿なのだろう。巨大な人型には顔はなく頭や手足の区別があるだけでぼんやりとした姿だった。

 神が背中を丸めるようにすると、鳥の翼のようなものが肩甲骨辺りから生え、頭上には金環が浮いた。


 神々しいというよりも、空気が重いような息苦しさと緊張でフィエルンの指先は震えた。


「さあ、どうする?」


 顎を引いて見上げるシュヴァイツの全身から闇の光が吹き出す。一面光に溢れた中で、彼の力は掻き消えることなく異質に輝いていた。


 国々を滅ぼすことは、魔王の抗えない破壊衝動だった。だからそこに意図があるなんて考えもしなかった。

 フィエルンは唇を噛んで彼の背を見つめた。

 畏れも身体的な苦痛も死も、シュヴァイツには無縁なものだ。それなのに今はフィエルンを庇っている。

 魔王は別れの喪失感を知っている。おそらくそれだけを恐れている。


「酷いわ、シュヴァイツ」


 言葉にせず唇を動かし、なんとか足に力をいれて立ち上がる。


『欲しい』とは告げられだが愛を語るような真似をしなかった癖に、どうしてここまで愛してくれたのだろう。本来知ることも叶わない感情のはずなのに。


 神の掌が下へと向けられる。

 魔王から急速に伸びた闇がフィエルンを取り巻き周りに壁を作った。壁は防御を与え自由を奪った。


「やめて!」


 カッと光が迸り稲妻のように魔王へと落ちた。聖女すら目を開けてはいられない程の強烈な光は爆音を伴い地と空を轟かせた。


「·····その程度か」


 闇の分身なら、これ程の光の力を浴びたら蒸発しかねない。それなのに全身に火傷を負いながらもシュヴァイツはその場に立っていた。

 シュウシュウと煙の上がる自らの腕を確かめて眉一つ動かさない。


「シュヴァイツ······シュヴァイツ」


 彼女の震える声に、少しだけ首を傾けたが振り返ることはなかった。


「光の神よ、気が済むまで俺を罰せよ。何百回でも何千回でも我が肉体が有る限り構わぬ。だが己の愛し児に手を出すな」


 ゆるゆると皮膚が再生していくが、神の力の前に治癒はとても遅かった。

 額から片目の周りは赤く爛れていて、美しい造型は無残な様相を呈していた。


 痛みも感じているはずなのに。

 シュヴァイツは片手で顔半分を隠し、目蓋を伏せた。


「俺が始めたこと。神々の定めた摂理を曲げ、聖女を求めたことを罪だというなら罰は俺が受けるまで」




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