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嫉妬

 10頭ほどの狼のような魔物の群れ。その額にはそれぞれ三番目の眼があった。三つの目を血走らせ、大きな口を開け威嚇すると魔物達はエスタールに飛び掛かってきた。

 一閃、鮮やかな剣先が魔物を次々に屠っていった。


「相性は悪くないよな、ルル?」


 倒した魔物が転がる砂上で、彼は鞘に収めた聖剣をトントンと軽く叩いた。


 聖剣を本当の持ち主であるフィエルンに1度返そうとしたのだが、改めて託される形で未だエスタールの手にあった。


「この子の名前はルルラーベリアと言うの」とフィエルンが教えてくれた。名前というのは特別な物には特別な意味があるから、むやみに名を公言するものではないそうだ。だから聖剣は持ち主たる聖女しか名前を知らない。エスタールに名を伝えたのは、彼女が今の持ち主として彼を認めたからだ。


 フィエルン、それは魔王でも同じことだろう?

 彼女が当たり前のように零す真の名を耳にする度、エスタールは顔には出さないが腹の奥がムカムカしていた。嫌でも二人の距離の近さを感じてしまうからだ。


 溜息をつき、前方に見える赤岩を眺めた。


 私も大概諦めが悪いな。


 雑念を払うように首を振ると、砂を踏みしめ歩き出した。


 あれから三ヶ月が経とうとしていた。


 岩が一部せり出した陽の当たる所には畑があり、フィエルンは収穫の手伝いをしていた。


「ただいま」

「エスタールお帰り、怪我はない?」

「無いよ。ここいらの魔物は弱いし、君のつけた加護もあるんだから」


 駆け寄ってきたフィエルンがホッと息をついた。


「良かった」


 決まった時間、エスタールは光の神殿の周りの見回りを買って出ていた。現在ここにはフィエルンの施した結界があり、上空からの魔物の侵入さえ不可能ではある。だが最初エスタールがやって来たように外から訪問する人間や補給路の確保の為に見回りをしているのだ。


「私はこれでも討伐に何度も出ているのを忘れたのか?」

「勿論分かってる。でも心配はするわ」


 もしエスタールに危険が迫れば察知できるように防げるように幾つもの聖女の力に守られていた。魔王に命を狙われたのだから彼女が心配するのは分かるし、同時に間違いなくフィエルンが大切に思っていることも感じている。


 それは彼女が魔王に寄せる気持ちとは異なることも。


 1週間後、彼女はここを修理が完了した飛空挺で発つ。エスタールが共に行けるのは飛空挺から彼女が降り立つまでだ。


「本当に一人で行くのか?」


 足手まといだとは分かっていても聞かずにはいられなかった。


「ええ」


 昼下がり二人で並んで話をしている時も、フィエルンはずって遠くを見ているようだった。


「シュヴァイツは、私を待っているから」



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