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赤砦の攻防3

「魔王が文明を破壊すると仰いましたよね?ローネンシア様」


 池は砲撃により形を変え、ホールは行き場を失った地下水が流れて水浸しになっていく。

 至る所に魔物の肉片が散在する惨状に、エスタールは呆然としていた。


 これほどの命中率と破壊力を誇る武器を、技術の結集である飛空挺に装備している。

 これは神の意に逆らうことではないのか。光の神を祀る神殿が何たる皮肉だろう。それとも人を守る神に許された行為だとでも言うのか。


 岩の上を大きく旋回する飛空挺に気を取られていた彼だが、横腹の傷の痛みで我に帰った。出血は落ち着いているし動けないほどでもない。

 砲撃の弾みで跳んでいった聖剣を拾い上げると、怪我人を介抱しようと後ろを向いた。


「う!?」


 背中に衝撃を受けて、エスタールはそのまま俯せに倒れてしまった。何が起こったか全く分からなかった。


「が、は」


 せり上がってきた血を咳込みながら吐き、何とか振り向いた。


 そこには魔王がいた。片腕でフィエルンの腰を抱き込み、彼女の口を手で塞いでいた。


「んんー!」

「フィエル…………」


 肩甲骨より下辺りに一撃をくらったようだ。細かく息をし、手足に喝を入れて起き上がろうとするが身体が重い。

 必死にもがき、フィエルンは魔王の腕から逃れようとするがびくともしない。


「わ、が、あ…………るじ」


 バラバラになっていたはずの魔物の女の身体が再生を始めている。片方の眼球だけの顔は下半分がようやく形成された状態で、唇を動かしていた。


「ある、じ」


 そんな女を魔王は見もしない。気にした様子は全く無く、ただ冷たくエスタールを見下ろしていた。


「ん、んー!」


 涙を浮かべるフィエルンの横顔を自らへ寄せるようにした魔王がうっすらと笑みを浮かべた時、エスタールには分かってしまった。


 なぜ自分を殺したいのか、なぜフィエルンにそれを見せようとするのか。


 そうか、彼もまた…………


 魔王の足元の床を伝った黒い光が、エスタールへと影を造る。避けられないと悟った彼は、こちらへ手を伸ばすフィエルンを見ているしかできなかった。


 君を守ると誓ったのに。










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