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荒くれ紳士パンダマン  作者: 海月大和
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荒くれパンダ襲来

 夜がきた。水平線の下に太陽か隠れるのを目をすがめて見るジョニーの出立ちは昼間と大きく異なっている。


 真っ白だった髪は赤茶色に染められ、特徴的な隈はメイクによって跡形もない。赤い目はカラーコンタクトで黒色に変えられていた。


 タンクトップの上に羽織った長袖のジャケットは右腕のタトゥーを隠してくれる。


 目付きの悪さと金属バットの剣呑さは健在だが、記憶に残りやすい部分は大分消されている。


 ダニエルは目出し帽を被せたがったが窮屈なのを嫌がってジョニーは激しく抵抗した。


 報復防止のために変装が必要なのは理解できるが嫌なものは嫌なのだ。


 ざざん、と波が港に打ち寄せる音がして、磯の香りがいっとき濃くなる。


 目的の倉庫街は港の中にあった。三方が海に囲まれ、歩いて入れるのは陸と繋がった一方のみ。


 小さな家が2・3軒入りそうな煉瓦作りの建物が全く同じ容姿で8つほど連なっている。


 倉庫街入り口には重そうな鉄柵が設けられ、2人の男が地べたに座ってタバコをふかしていた。


 いかにも気が抜けていて、どうせ誰も来ないと高を括っているようだった。


 ジョニーはダニエルの指示を思い出す。


「お前の役割は陽動だ。正面から行って倉庫の外で騒ぎを起こし、大勢の注意を引く。その隙に俺が中に忍び込んで目標を回収してくる。15分、長くても20分暴れたら撤収だ。いいな?」


 危険な囮役をやれと言われた訳だがジョニーは特に不満はなかった。小難しい指示もなし、分かりやすくていい。


 ジョニーが鉄柵に近づくと、2人の男は同時にその存在に気づいたようだ。のったりとした動作でこちらに歩いてくる。


「なんだテメェ。ここはガキのくるところじゃねぇ。あっち行け」


 2匹のヘビのタトゥーが彫られた右頬をずいと突き出すように威嚇してくる。


「出た。下っ端の言いがちなセリフNo.2」


 ジョニーのあからさまな挑発に男たちの空気が変わる。


「舐めやがって……。ぶっ殺されてぇか? あぁ!?」


 善良な一般人ならば震え上がり逃げ出したくなるほどの怒気を発して胸ぐらを掴んでくる。


「No.1。もう少し捻りが欲しい。12点」


 恐れるどころか小馬鹿にした態度を崩さないジョニーにキレた男は拳を振り上げた。


 だがそれを振り下ろす前にジョニーの膝蹴りが相手の鳩尾に突き刺さる。たたらを踏んで後ずさる男の顔に追撃のパンチを叩き込むと、男は白目を向いて倒れ伏した。


「この野郎!」


 泡を食って殴りかかってくる男の二連打をひょいひょいとかわし、スネをバットでぶっ叩く。悲鳴を上げ、もんどり打って倒れた男を捨て置いて、ジョニーは奥へと進んだ。


「くそが! 待ちやがれ!」

「待ちませーん」


 すげなく返して倉庫の横を三棟ほど通りすぎる。


 目的の場所は遠目に分かりやすい。ドラム缶の蓋を外して側面に適当に穴を開け、木材を盛大に燃やして灯りとしたものが3・4つ、特に規則性もなく置かれていて、その周りには柄の悪い男がたむろっていた。


 酒を飲んだり派手に音楽を鳴らしたり、楽しそうに話し込んだりしていた彼らだったが、暗がりからジョニーが現れると一様に目を細めて見覚えのない客を胡散臭そうに睨み付ける。


「んだテメェは。どっから来た?」


 ジョニーの行く手を阻むように男が立ち塞がる。


「バットなんか持ちやがって。カチコミのつもりか?」


 退路を塞ぐように2人の男がジョニーの後ろに付いた。


「12・13・14……。まあまあいるな」


 それを全く無視してジョニーは周囲を見渡していた。


「おい。どこ見てやがる? シカトすんじゃねぇ」


 額が付きそうなほどジョニーに顔を近づけてドスの効いた声を浴びせかける男。暴力の気配を感じずにはいられないその様に、しかしジョニーは何の痛痒も感じていない。


「オイ。なんとか言えや」


 ジョニーの後ろに陣取っていた1人がそう言ってジョニーの背中を軽く蹴った。途端にジョニーは身体を180度回転させてバットを振り切る。


 骨と金属がぶつかる鈍い音。下顎を真横に撃ち抜かれた男は脳を大きく揺さぶられ、意識を失ってその場に倒れた。


「あと13」


 バットを肩に戻し、平然と言うジョニー。


 一瞬ぎょっとしたツインスネークの男たちは、次の瞬間ギラギラした殺気を放ってジョニーを取り囲んだ。


「やりやがった、コイツ!」

「ふざけやがって! ぶっ殺してやる!」


 鉄パイプや角材を手ににじり寄ってくる彼らを見回して、ジョニーは挑戦的な笑みを浮かべて呟く。


「そっちも上手くやれよ。ミスター・ジェントル」

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