第二話 旅の始まり
さて皆さんは今、何をしていますか?
友達と昼食を食べていますか?それとも授業が退屈で外をながめていますか?
はたまた、好きな人に告白しているところでしょうか。
俺はというと、
大量の蜘蛛の魔物から逃げています。
「おいロリッ子、おまえやってくれたな!」
「うちは悪くない。絶対うちは悪くない!」
「はぁー!?おまえ、自分でこんなところにとばしといて自分は悪くないとかほんと何言ってんの!?普通は最初は街にするのが基本だろうが!」
「くぅぅ・・・。だ、だって早く魔物と戦いたかったんだもん!それに別にいいじゃん!倒されてないんだし!それにあんただって今、戦力外の役立たずになってるじゃん!普通は予備の弾とかもってくるでしょ!」
「そ、それは仕方ないじゃないか。てっきりあっちから弾が自動的に補給されると思ってたんだし・・・・。」
「は、そんなラノベみたいなことがあるわけないだろ!おじさん、天才じゃなかったんですか~。そんなこともわからないんですか~?」
くそ・・・・。っていうか、あいつ戦ってる真っ最中なのによく平然とかえせるな・・・・。なんであのロリッ子はあんなに剣の使い方がうまいんだよ。蜘蛛みたいなのが紙のようにスパッと真っ二つに切られていってるじゃねえか。初芽も凄い。ナイフだけで戦っていて的確に蜘蛛の頭を切り裂いていっている。
後からあいつらに聞いたのだが、なんでも死後の世界で2年間ずっとリアル戦闘ゲームをしてきたらしい。初芽は運動神経がずば抜けてよかったからし、それに今は魔族仕様の体だからな。納得できる。
しかし俺はラノベの読みすぎか弾は普通に補給されると思っていた。だから魔物に向けて乱射してたらすぐ弾切れになって戦力外通告された。
「と・に・か・く、おまえらがんばれよー。俺より強いんだからな。強者が弱者を守るのは普通だからな」
「え!?何言ってんの、おじさんも戦うんだよ!ナイフがあるだろ!ナイフが!魔物へのけん制ぐらいできるでしょ!ねえ、初芽からもなんか言ってやってくんない!?」
「え、べ、別に私としては任せてくれるほうが嬉しいんだけど・・・・そのうち私なしじゃ生きられない体にしようとおもってるし・・・・。」
初芽が後半あたりでなんか怖いことを言っていた気がするが・・・・。まぁ聞かなかったことにしておこう。
「まぁ、とにかくがんばれよー。俺はほかの魔物が集まってこないか見とくからさー。あ、なんならおいしいご飯をつくっといてやるよ」
「ん~わかったよ。その代わり飯がまずかったらおじさんを切り刻んでやるからな。」
「アリナ、もしお兄ちゃんを切り刻んだらそのときは・・・・」
「ッ!も、もちろん冗談だからね!ほんとにただの冗談だから!」
初芽は相変わらずの異常なぶらこんだな・・・・夜寝るときとかは注意しておこう。
それから約30分たったころ、最後の1匹が胴体を両断された。
「はぁ~。疲れた~」
「おつかれさ~ん。まぁおまえのせいでこうなったんだがな」
「・・・・まだ根にもってんの?器が小さいな~。さっき何度も謝ってやったじゃん」
「何が謝ってやっただ。それにこれで根に持ってないやつがいたらそいつは器が大きすぎるんだよ。」
「ハイハイそうですか。とりあえず・・・いっただっきま~す!」
そう言ってロリッ子よほどおなかをすかしていたのか、ものすごい勢いでほおばった。
「ッ!なにこれものすごくうまい!おじさん料理できたんだ、めっちゃうまいんですけど!」
「まあな。夏休みとかはじっちゃんに連れられて山とか無人島に行ってサバイバルしてたからな」
じっちゃんはいつも夏休みになると必ず俺を連れてサバイバル行っていた。しかも夏休み丸々で、小学校に入学してからは毎年行くようになった。あの時はほんと楽しかったものだ。じっちゃんは元気にしているだろうか。
ちなみにサバイバルから帰ってきた後は必ず初芽がヤンデレになって大変だった。
「ねえねえ、この食材ってここでとれたものなの?」
「そうだよ。逆にそれ以外にどうやって集めんの?で、これからどうするよ?」
「うちに聞かないでよ。サバイバル得意なんでしょ。だったらうちよりもわかるでしょ」
「はいはいそうですか。おまえに聞いた俺が間違いだったよ」
「ねぇお兄ちゃん、テント作るのとかはどう?持ち運ぶのとかも楽だし。」
「いや、別に寝るためだけのものだから現地でもそれぐらいの材料はとれるから。それにこの先も魔物にあう可能性が高いし戦闘や逃げるときの妨げになるから極力荷物は増やしたくない」
「・・・・じゃあなんでわたしたちに聞いてきたの?」
「い、いやぁだって今まだ昼ぐらいだしさ、寝床も簡単に作れるし何もすることないからさ。ほかになにかすることなかったかな~と思って。だからいちよう聞いておこうと思って。な?」
「そう」
「そうです」
「あ、思いついたんだけどさ、狩りに行こうよ。そして燻製肉つくろうよ!サバイバル生活の動画で見たことあるし!」
「お、そうだな。燻製はおいしいからな!いやぁ~じっちゃんと初めて食べた時をおもいだすな~。あれは絶品だったな~」
俺は初めてじっちゃんに連れられてサバイバルをしたときに食べた燻製肉を思い出していた。
あの肉はなんだったかな?確か鹿だったようなきがするんだけど・・・・。
「ていうかこの辺りに鹿とか猪とかいるの?あんな魔物の肉なんて食べたくないし。」
「普通にいるよ。まぁ数はちょっと少ないんだけど」
「へえ~いるのか。てっきり魔物とか多いし、いないと思ってたんだけど。」
「まぁ護身用に魔法使ってるしね。それにこの森は草食動物にとって宝の山だからな。ここで生きていくためだけに進化したやつもいるぐらいだし」
そうか。だから食材探しにあまり時間がかからなかったのか。っていうか、動物も魔法使うんだな。さっき戦った雑魚モンスター魔法使ってたしな。しょぼかったけど。
そもそもどうやって魔法を覚えているのだろうか。この世界の動物は知能が高いのだろうか。もしくは遺伝子とかで生まれつき持っているのだろうか。
「なぁ、そいつらってさ、遺伝とかで生まれつき魔法をもってんの?」
「ん?そうに決まってるじゃん。まぁ、生まれつき持っているといっても、そこまで使いこなせないからな。人が最初は魔法のやり方を教えてもらうように、生まれたらすぐ親が教えるんだよ。魔法の種類は違うことが多いから、魔力のこめ方を教えるだけだけどな。ちなみに神獣と呼ばれてる奴は生まれたときにすっごい強力な魔法を持ったもの、何個もの魔法を持ったものだ」
「じゃあさ、人間も生まれつき魔法をまってうまれるのか?」
「そうだよ」
「そうだよってことは俺たちも何らかの魔法をもってんじゃね?いくら作られたからだとは言え、この世界の魔族の遺伝子を持ってんだからさ」
「そうだった。すっかり忘れてた」
「・・・・忘れてたじゃねえよ。もっと早く言えよ!そしたら俺もあの魔物と戦えたのにさ!」
「こっちについたら言おうとおもってたんです~。いきなり魔物に囲まれてたからわすれちゃってたんです~。・・・・でも自分がちょっと悪いのでナイフしまってくださいおねがいします」
ちょっとしか悪いと思ってないのか。
そのままナイフを向けていると、ちょっとして私が全面的に悪いですと言い直した。
「でさ、どうやって、魔法を放つの?」
「普通に手の先に魔力を流すだけだよ。そして力を一気に抜くんだよ。・・・・まぁやって見せるから見ててよ。・・・・ふぬ~~~~はっ」
その瞬間、ロリッ子手から勢いよく水がとびだして・・・・その先にあった大木に穴が開いた。
ちなみに魔力量が多い人ほど威力が高いらしい。ま、当たり前か。
「す、すげーなぁ・・・・!」
「す、すごい!・・・・次、私がやるよ!・・・・くぅ~~~~はぁ」
手から火炎放射器のように炎が噴き出して、大木のさっきロリッ子が穴をあけたところを灰にしていた。
もちろん、そのあと大木が倒れてきたことは言うまでもないだろう。
「よし、次は俺だな。ふうううう・・・・は」
バチ。
そんな静電気のような音がした。
「は・・・・?」
「ブハ!」
「クスッ!」
「な、なんで、おれだけーーーーーーー!?」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
俺の叫びと、ロリッ子の笑い声だけが、空に響いていた。