表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

2.



「驚いて、ブレーキも踏めなかったよ」


そう言うと、ある三十代の男は、牢屋の中で笑った。

運送会社に勤めていた彼は、四年前、解雇されると同時に鉄格子の向こうに閉じこめられた。


「ふつうに道を走ってたら、上から女の子が落ちてきたんだ。俺のトラックは空中で女の子にぶつかった。ブレーキを踏んだのはその時だ。人を跳ねたからじゃない。フロントガラスにヒビが入ったからだ」


男に悪びれる様子も無く、そう語った。それは彼が四年間、幾度と無く繰り返した言葉だった。そうして挑発的に、自嘲気味に、不快なセリフを吐く男は、あたかも非難を浴びる事で、自分でも理解しきれない不幸と罪悪感から救われようとしていたように思う。




「五年くらい前だね、あの子がおかしくなり始めたのは」



ある女学生は、学園の鞄を下ろしながら言った。


「背中が痛い、背中が痛い、って。どうしたの? って聞いたら、羽根が背中を突き破ろうとしてる、だってさ」


彼女は大人ぶって、その不可解な話をさも平然と語った。


「あの子、病気なんだね。自分が空を飛べるって、信じてるんだ」



空を飛ぼうとして車に跳ねられた天使を思い出し、彼女何か殺伐とした笑みを浮かべた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ