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2.ピチピチの十八歳なのだが?

ダメだ。

この二人は良い人過ぎて期待出来ない。



となると、期待出来るのはただ一人。


「レイラとローザがいれば問題ないのに……」


俺と目を合わせようともせず、そう不貞腐(ふてくさ)れたように(つぶや)くアリアだけだ。



「アリア、失礼だろう?」


「いやいいんだ。アリアの好きなようにしてくれ」


アリアの事を(いさ)めようとしてくれたローザを俺は止めた。



さあアリアよ。


散々に俺の事を無能と(さげす)み、出会ったばかりではあるが追放の鉄槌(てっつい)を下すがいい!!



そう思ったのだが、流石(さすが)に初日に追放はギルマスに(もう)(ひら)きが出来ないと思ったのか、残念ながらアリアもそれ以上俺に何かを言ってくれることはなかった。





それからしばらくは、連携の訓練を(かね)ねて王都周辺のモンスターを四人で狩ってまわる事となった。





「疲れた」


「眠い」


「このネバネバ触りたくない」


「お腹空いた」


「お菓子食べたい」


喉乾(のどかわ)いた」



一見大人し気で口数は少ないものの、アリアはしばしばそんな我儘(わがまま)な子どもの様な事を言った。


そしてそれをレイラが優しく、そして時にローザが厳しく叱ってなだめていたのだが……。



俺はそんなレイラとローザに対し


「まあまあ、アリアもそう言っているんだしいいじゃないか」


と無責任な事をいい、アリアを甘やかせる限り甘やかす事にした。



俺が下手に出てアリアに()くせば()くす(ほど)、きっとアリアはそれにつけあがり、近いうちに


『アンタみたいなクズ、私のパーティーにはふさわしくないわ!!』


と追放してくれる……



そう思ったのだが?





「お(じい)ちゃーーーん」


またレイラに(しか)られたアリアが、そう言いながら俺の(もと)()()って来た。


「どうしたアリアや!」


(すで)に毎度おなじみとなった茶番(ちゃばん)に付き合ってそう返す。



「レイラがご飯の前におやつを食べちゃダメだっていうの! 私、さっきあーんなにがんばったのにぃー」


「そうだ、アリアはさっき大活躍(だいかつやく)だったもんなぁ。昼食の前にさっき(まち)で買ったクッキー食べるくらいいいよなぁ」


「流石お爺ちゃん! アリアの気持ちを分かってくれるのはお爺ちゃんだけだよ。アリア、お爺ちゃんのこと大好き!!」


「おうおうそうか、お爺ちゃんもアリアの事が大好きじゃよ」



そんな俺とアリアのやり取りを聞いていたローザがやれやれと楽し気に頭を()った。


「無責任に甘やかさないで下さい。私はアリアの体の(ため)を思って言っているんですから」


レイアも口ではそんな事を言っているが表情はどこか楽し気だ。





こんな俺たちのパーティーの事を


「父親役であるローザと母親役のレイア、そして子どものアリアと祖父役のハクタカの一家四人によるほのぼのホームコメディ」


と最初に(しょう)したのは誰だっただろうか。



「まるでハクタカさんとアリアさんの関係は、日曜の午後六時にやっている国民的人気芝居に出てくるお爺ちゃんと(まご)の様ですね」


そう微笑(ほほえ)ましげに言ってのけたのは、確か顔馴染(かおなじみ)みとなったギルドの受付嬢(うけつけじょう)だったはずだが。


それを聞いて以降(いこう)、なんかしっくり来たらしいアリアが俺の事を


「お爺ちゃーん」


そう呼んで甘えてくるようになってしまった。





十八のピチピチの青年を捕まえてお爺ちゃんとは何事だ。


そう思わないことも無くはなかったが、だがまぁ、それはいい。



問題は俺のライフプランだ。





アリアにさっさと追放してもらって気楽なスローライフを送るはずだったのに。


「ずっとずっと一緒にいようね、お爺ちゃん」



最初に会った時見た、心を閉ざした(かた)い表情はどこへやら。


俺の腕にしどけなく寄りかかりながら、年相応(としそうおう)(あい)らしく、そして(ひど)無邪気(むじゃき)に笑うアリアを見て俺は自業自得(じごうじとく)ながら、


『この調子(ちょうし)では当分(とうぶん)追放してもらえそうにないなぁ』


と、深い深い溜息(ためいき)をつくのだった。

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