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番外編3 父はずっと『まて』をしています


そもそも、母上は15年くらい前に王都のタウンハウスを出て領地の離れに籠っていたのではないのか?

そう長い事俺は、認識していた。

しかし、現実は違ったらしい。


母上は、父上と喧嘩して我が家を、正確には父上の前から出て行った。

ただ、幼い俺たち子供を気にかけて、老執事に様子を報告させていたらしい。

実際には、当時の陛下に秘密裏に相談してレティの傍にいたらしい。感受性の強いレティが大切にされるであろう神殿であっても、幼い子供の心細さを慮ってのこと。それでもしばらくはレティの精神状態は落ち着かず、俺も神殿に通っていたのだが・・・全く気が付かなかった。

先代王からまだ幼いレティに病弱なまだ王子だった陛下に癒しの力を使うように、ほぼ強制されていた。今ならば、子を思う親心からの強行だっただろうが、当時は神殿とかなり揉めたらしい。

まだ聖女の力が安定していない幼いレティだ。万が一にも力がうまく制御できなければ、暴走を起こす。もう少し、せめて数年訓練を積んでからという神殿側の意見を無視して、無理やり城に攫おうとしていたらしい。

それを収めたのが母上だったのだ。

母上がそばにいるとレティの精神は安定するからと、神殿の巫女に成りすまして傍にいて城にも一緒に通った。

その代わりに、絶対に侯爵である父上に内緒にすることが条件だった。

父上と顔を合わせたくない。もしも、バレたらどんなことをしてもレティを連れて領地に籠ってやると反対に先代王を脅したらしい。

あちらが息子を思う父ならば、こちらは娘を思う母だ。それに母上は、こんな状況にレティを置いた父上に抑えきれない憤怒を起こしていた。

冷静になった先代王と結託して、父親として怒りを覚えた二人が周りを巻き込んで母上の存在を隠すことになったのだ。

母上は、俺たちが子供の時から『領地の離れで引き籠っている』が基本スタイルだ。父上が一度でも、自ら離れに足を踏み入れればバレそうだが残念ながら10数年一度もそれはなく今に至る。

神殿総ぐるみで、トップシークレットとして知っているのは上層部数名だけだったらしい。

勿論、父上はいまだに知り得ていない。

父上はともかく、何故俺まで?と、この離宮で再会したときにきいたら驚くべきことに、俺が半年以上母上がいないことに気が付かなかったからだと・・・

記憶を辿ったが、確かに母上が居なくなった時がどうだったかとは思いだせない。


「エドには、あの人に隠し事なんてできそうもないし。その点、レティは淑女教育と王妃教育で誤魔化すことが出来るものね。」


父上のいなくなった離宮のレティの私室に、母上の軽やかな声が響く。

ぐっ・・・

それは、俺も否めない。

あの父上はレティに対しては、親子というには距離感がありすぎる。

だが俺に関しては、親子の遠慮がないと言えば聞こえはいいが、どちらかというと部下のような駒扱い。

多分ではない、絶対に父上を欺く自信はない。


「しかし、ここまで根が深いとどうしたものかなぁ・・・」


陛下の声で、ハッとする。


「そうですね。この離宮はわたくしの結婚と共に閉鎖されますし、新居の方へは・・・」


レティの困惑した顔でヴィクター殿下を見るがこちらも困っている。それはそうだろう。

今、王宮敷地内にはもうすぐ完成する新たな王太子宮を建設中だ。

これは数年前から、ヴィクター殿下とレティの為の新居として建てられていた。


いま、レティの住まうこの離宮はあくまでも聖女の為のもの。

歴代の聖女が暮らすため、次代の聖女の為に開けておいた方がいい。

現在は一人だが、他国には複数人いる。

それこそ、クラウディアが今いる、ハイドランジア国は見習いも含めて5人いる。候補はもっといるとの話だ。我が国でも新たな聖女が生まれてこないとも限らない。

今の清浄な世がこのまま続くためには、聖女の不在がないようにしないといけない。

とおもうのだが、世の中そううまくはできていない。

だが、いくら聖女といえど夫となる殿下とこの聖女の離宮には住めない。


「そもそも、母上と父上とはどんな理由で喧嘩をしているのですか?」


一番の解決法は、母上が屋敷に戻ってくることが一番だがそれは再会したときから頑なに拒まれている。

だが、その発端の夫婦喧嘩の理由を俺たちは知らない。


「夫人、そろそろ彼らに話してもいいのではないのか?」


「そうですよ、レティシアも結婚しますし、エドワード殿もクラウディアさんと再構築を始めました。

まだ若いこの子たちの為にも、教えてもいいのではなくて?」


陛下も王妃様も優しい声と表情で母上に促す。

それに、困ったような迷う心が透ける様な顔をしていたが、思うところがあったのか居住まいを正して顔を上げて、では、と話し始めた。


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