表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/57

『まて』をやめました 48

本日2つめです。

予定と変わってしまいました。

本来の48話が消えてしまい、あわてました。

本当は間にエドワードsideが、入る予定だったけど消えたものは仕方がないので、番外編と被っている部分もあるので今回は省きます。

話は繋がっているので、よろしくお願いします







虹色に光る噴水ショー、夜だと言うのに光を放って飛ぶ蝶、小さな提灯のような花は時間で色を変えて光るなど趣向を凝らした王宮庭園。

美しく幻想的で、多くの招待客たちが庭園に足を踏み入れて楽しんでいる。

若い子息令嬢たちは、目をキラキラさせて、結婚適齢期の年頃のカップルは微笑み合い寄り添い、熟年者たちは魔法の精密さに感心して目を見張った。

現王の戴冠式が急拵えで質素だったので、その分今回の王太子のお披露目に力を注がれた。

それこそ王宮魔導士の皆さんは、各国の要人にその力を見せるのだと息巻いていた。実際、戴冠式が質素だったせいで国王の力が劣っていると噂されていたからだ。

招かれた他国の使節団の目にも、国力の健在さを周知出来たことだろう。


その幻想的でロマンティックな庭園を見下ろせるバルコニーで、私の手に誕生日の贈り物を乗せ、さらに愛の言葉を真剣にまっすぐに、そして熱の籠った瞳で見つめられて囁かれた。

贈り物は、愛する人の色。しかも身に着けるアクセサリー。


髪飾りなんて素敵!



ふわぁ~~~~

舞台(シチュエーション)としては最高。


綺麗な風景。

最高な誕生日の贈り物。

好きな人からの愛の言葉。

昔の私が何度も妄想していた世界よ。


美しい背景と音楽をバックに、愛を囁かれ私は嬉しさのあまりエドワード様の胸に飛び込んでいく。

女性にも間違えられそうな美しい男性のエドワード様だけど、その胸板は見た目よりも逞しく飛び込んできた私を難なく受けとめて、そのまま抱きしめてくれる。

嬉しいけど恥ずかしい私は、顔を上げることが出来ない。小さな声で「・・・私もです」って言うのがやっと。

するとエドワード様の胸に顔を埋めている私の顎に手を掛けられて無理やりじゃない、でも逆らい難い力で上に向けられる。見上げたそこには、嬉しそうに目を細めて微笑むエドワード様が情熱の瞳をもって見つめていた。

私も嬉しい涙が溢れそうな潤んだ瞳でエドワード様を見つめ返す。

顎にかけられた指が、私の目じりを拭う。

その動作でこらえきれない涙が私の頬を伝う。

「あっ・・・」

私の頬に涙とは違う、温かな感触が。

私の頬の泪を、エドワード様の唇がなめとっていた。

チュッチュッと軽いリップ音とともにいくつもの頬をくすぐるような感触。

驚きで止まった涙だが、エドワード様の頬への口づけは止まらない。

エドワード様の手のひらは、いつの間には私の髪を愛おしそうに撫で指に巻き付けて弄んでいる。

「・・・はぁ、ディアが悪い。そんな顔で見られたら我慢が出来ない。

今度は全身を俺色に包むからな。」

そして、そして、そのご尊顔が近づいてきて・・・


キャ~~~~~ッ







「・・・素敵なものを、ありがとうございます。」


思い出すのは、あの日記にも書き綴っていた妄想物語。

いつの日か、エドワード様からエドワード様の瞳や髪色のアクセサリーをもらって、お互いの愛を確かめ合う。さらに、そのままファーストキ・・・ってなことを悶々と妄想していた。

欲求不満かしら?

でも、それは過去の話。

うん、物語だ、あれは。

現実的には、感謝の言葉を返すだけ。

エドワード様は、そんな性格の人じゃないとわかっているし、この贈り物を送り愛の言葉を紡ぐだけでどれほどの勇気がいっただろうか。

それは分かる。

分かるけど、今の私は塩対応です。

あのころならば、野原の坂道を転がるように、ころころと簡単に転がされていただろう。お結びころりんのお結びのように、コロッコロッコロッコロッと・・・

それこそ、とどまることを知らずにどこまでも転がって、ネモフィラ国まで転がっていきそうなくらいに・・・

だが今は違う。


あと2年は、絶対に審判(まて)の時間を設ける。


・・・・・・ちょっとは、危なかったけどね。

大丈夫よね。ばれていないよね?

私が未だにあの美形顔に弱いなんてばれたくないもの。

私の『まて』の10年をエドワード様の3年で許すか許さないか、決めるのだ!

1年そこらで、コロッと陥落してなるものか!


確かに今は、まだ心惹かれる男性はいない。

エドワード様が顔がいいと言う一点突破で暫定一位だけどね・・・


「あっ、・・・うん、良かった。・・・」


気合を込めての告白だったんだろうな。

思った様な返しがなかったことに、言葉が上手く出なかったようだ。それでも、掠れてはいるが返事を返す。


好きか嫌いかなんで言えば、好きだ。

でもそれを言って、喜ばせて後の2年を疎かにされるのは嫌だ。

今のエドワード様なら、そんなことをしない可能性の方が大きい。

けど100%の信頼は出来ない。

その信頼が出来ないのが、今の関係なのだ。


見る間に綺麗な柳眉が下がってしまって、悲しそうな顔をするがその憂い顔もきれいだ。

きっと相当の、私が思うよりも相当の気合を入れていたのだろうな。

ヴィクター殿下とやってくる一団に、最初はエドワード様の名前もなかったし、きっと誰かと変わってもらったかしたんだろうな。他国からの使節団を突然変更するなんて大変だ。きっとかなり無理に捻じ込んだのだと思う。手続きにも手間がかなりかかる。それでもやって来たと言うことはエドワード様が自主的にと思っていいよね。誰かに、言われたからでないと思う。

それは仕事として来たかったのではなく、きっと私に会いたくて来たんだと自惚れていいだろうか?こんな素敵な贈り物を持っていたんだからそうよね?妄想じゃないよね?


「・・・とても私の好きな色の髪飾りですね。

うふふ、今着けてもいいですか?」


今回はエドワード様の努力も認めて、私も歩み寄ろう。

イイでしょう、今回は私が大人になって今までのことを一端隅に置いてあげましょう。

エドワード様がこの国にいるのは短い時間だし、仕事で来ているのだからこうしてゆっくり話せるのもこの時間だけ。

お互いにまだ探り探りだけど、それも他と違って面白いかも。

物語のように気障ったらしい言葉よりも、私たちでしか紡げない失敗だらけの言葉もいいかも?


恐らく普通の婚約者だったなら、私のさっきの返事は失敗だ。

でも、それが今の、関係再構築中(まて状態)の私たちの関係にベストな返事。

私は私が思う様に言葉を伝えるし、行動する。

私はエドワード様に言いたいこと言うし、態度でも表す。

この贈り物は、本当に嬉しかった。

だから、折角もらった髪飾りを身に着けたかった。

私の妄想劇の続き、贈られたアクセサリーを付けてもらう・・・

・・・・・・せっかくだもの、誕生日プレゼントだし、このくらいは我儘じゃないよね?


「着けて、くださいますか?」


あざといと言われてもいい。

ちょっと上目遣いで、エドワード様の色に囲まれた髪飾りを差し出す。


「っ!ああ、勿論だ!!!」


私の言葉で一変、嬉しそうにブンブンと振れる尻尾が見えそうなくらいに破顔された。

今日の私の髪に飾られているのは、淡い色合いの紫の花。

最初は王太子の瞳の色の黄色い花をと言われたのだが、夜会用に用意されたドレスは随分前からジェイクがしていた。ジェイクとおそろいの地味目なグラデーションピンクだ。地味と言っても胸元は、ベビーピンクで裾に向かってだんだんとくすんだピンクにグラデーションされた上品な大人ピンクだ。

そのドレスに黄色の生花は合わないと言うと、王妃様からドレスを贈ると言われたが丁重にお断りした。話をいただいた5日前から動いても間に合わないし、何よりも婚約者候補でもない私が殿下の色である黄色に合わせたドレスなど着れない。其処はジェイクが真綿に包み込むような遠回しな言い方で断り文句を援護してくれた。

最終的にはこの国のイメージカラーである、紫の花で落ち着いたのだ。

因みにこの国の未婚の女性は、王家主催の夜会は生花を髪飾りに使うことが慣例となっている。

生花と宝飾品の髪飾りを合わせる人もいるので、エドワード様がくれた髪飾りを着けても可笑しくない。


エドワード様に髪飾りを渡して顎を引いて生花の飾ってある方を向ける。

俯いた視線の中でエドワード様の腕が上がり、私の髪に触れる感触がする。

髪に触れるため距離が近くなる。

視界に入るエドワード様の胸元が今までなく近い。

ふわりと香るグリーン系のコロンの香り。

優しくふわりとした触れ方で飾られた花を傷つけない為か、ゆっくりと丁寧に触れるのが分かった。

花を支え金具を差し込まれる感触、髪に触れる優しい手つき。

ここが人目につきにくい夜のバルコニーとはいえ公衆でなかったなら、そのまま抱きしめられているような感覚に酔っていただろう。

至近距離で嗅ぐ、エドワード様の香り。その香りに当てられ、酩酊しそうだ。

触れられた髪を撫でるようにそのまま掬い上げられて一房、気が付くとエドワード様の手にあった。

持ち上げた目線の先で、捕らえられた一房の髪に形の良い唇がチュッと小さな音と共に触れる。

その髪に唇が触れたまま、俯いて目線はこちらを見る。

今までにない、妖しく輝く黒曜石の瞳。




どどどどどっ、どうぢだ?どうぢだんでづかぁ?!

えっ、さっき、あれって、あの、髪に・・・エドワード様!

あの、アレよ、あれ!

髪に唇が触れたよ。

確かに触れたよ。

チュッて確かにリップ音したよ。

あれっ?これってまた私の妄想かな?

でもでも、あれ?いまだに髪を手に持ってるし・・・

くるくる指に絡ませて、まるで私の妄想の中の様に弄んで・・・いる?

あれ?ってなんでまた髪に、今度は私の顔をしっかりと目を合わせたまま口づけて・・・


えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇxっ!!!!!


妄想じゃない!

現実だぁ、リアルだぁ。

うわぁ、うわぁ、うわぁぁぁ

なななななっ、何で?

今まで、そんな雰囲気なかったじゃない。

甘いお砂糖たっぷりな、ハニーな婚約者な人じゃなかったはずよねぇぇぇ?!




読んでくださりありがとうございます・

次で本編完結です。

完結ですが、番外編が一つあります。

よろしくお願いします

次は20時です


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ