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『まて』をさせられました 44

最後を現在書き換え中につき、でき次第載せていきます。

本当は、諸悪の根源侯爵VSクラウディアで書き上げていたのですが、あまりにも殺伐としていてほのぼのには遠かったのでほのぼの路線で書き直し中。

それに伴い、ちょいちょい書き直しを戻ってしていますが、本筋は全くかわっていません。

笑える話を書きたい和泉です。

よろしくお願いいたします。


煌びやかなシャンデリアは、魔力を使った七色に煌めく魔道具の明かり。

色とりどりのドレスに身を包んだ紳士淑女が王宮大ホールに集まる。

国内貴族だけでなく、他国の王族、大使も多く参加したその夜会は、とても活気があった。


その日の夜会は、この国の王太子の立太式を祝うもの。


この夜会の数時間前、晴れ渡る空のもと、この国を率いていく未来の国王は多くの賓客の見守る中、緊張した面持ちで現国王を支え学び、多くの民の健やかなる暮らしを大聖殿で誓った。

硬く結ばれた唇は、色を無くすほど緊張をしていたが多くの国民の命を預かる重責に堂々と大きく張りのある声で宣言した。

それに柔らかい微笑を浮かべ、王太子となったばかりの頭にその証の冠を国王は載せて認めると同じく高らかと返した。


その瞬間、花火や祝砲があがり、それに負けじと大聖堂前に集まった民衆から喜びの歓声が広がった。


昼間の興奮冷めやらぬ中に、始まった夜会。


多くの貴族たちは、昼の立太式よりもこちらがメインかというような活気に満ちていた。

王太子と同世代の子息令嬢も多い。特段の理由を除き、すべての貴族がここに集っている。

王太子には、婚約者候補はあれど正式に決まってはいない。その座を狙っている令嬢たちの気合もホールの熱気を上げている。


「お前まで付いてくることはなかったんだぞ。」


そう言ってウエイターから受け取った、ウェルカムドリンクのグラスに不機嫌そうに口をつけるのはシャンデリアの光を受けていつもよりも眩しく輝くヴィクター殿下。

端正な男らしい顔立ちのヴィクター殿下に令嬢たちからの秋波は向けられる。

だがそれよりも比ではなく秋波より暑苦しい熱視線を送られているのは、その隣に控えて立つシャンデリアより輝く美麗な男エドワードだった。


「そのようなことはおっしゃらないでください。貴方の身を思えば私が同行することは必至です。

レ、姉上も心配そうにしていましたから、少しでも憂いが取り除かれるのでしたらこのくらいはなんでもないです。

ただでさえ、レ、姉上の体は今は大切な時期でもあるのですから・・・」


「だから本来、それはガリレイ卿だったはずなのに・・・」


「ああ彼は、新婚ですからね。

新妻と10日間も離れるのを嘆いていたので、友として替わってあげたのですよ。」


嘘くさいと言われるような引きつる笑顔で、ヴィクター殿下に答えながら視線は広いホールの彼方此方に向ける。

それは周りを警戒しているというよりも、誰かを探している視線。

だがその視線が誰かを探し出す前に、本日の主役の入場のファンファーレが鳴り響いた。


「まったく、本当はなんのために来たんだか・・・」


鳴り響くファンファーレに小さく呟いたヴィクターの声はエドワードには届かない。

主賓の並ぶ位置へ移動して入場を待つ。


ギギギッと重厚な音を響かせて大きく開いたメインゲート。


そこから、薄茶色の髪の国王と王妃、それに本日、王太子となった王子が続いた。

その王子はピンクのドレスをまとった可憐な令嬢をエスコートしていた。


淡い色の髪はふわふわとしていてサイドでハーフアップされて瑞々しい生花で飾りをつけていた。ピンクのドレスも上品な落ち着いた色で裾に向かってグラデーションで濃くなっていっている。

清楚で落ち着きのある装い。髪を飾る生花が可憐さを引き立てていた。

目の前を通り、王族席に導かれる人をエドワードは、呆然とした顔で見送った。

横にいるヴィクターは、それをそっと盗み見てため息を漏らす。


──────クラウディアぁ~。君はまだ俺の婚約者なのに・・・


多くの人が入場する王族に目を向けている中、エドワードの視線を痛いほど浴びながら進むクラウディアは周りに微笑を深くして振りまく。










小さくカチャッとカップが音を立て覚醒した。

隣で珍しくレティが、カップを落としそうになっていた。


婚約解消の書類へサインをしてほしいと、願われた時は繋がりがなくなるのではないかと無様にも縋りついたがクラウディアの“未来はある”の言葉に、一度サインをしてその後、使えるものはすべて使って今度こそ素直な気持ちを伝えて両想いになることを決意した。

そして、サインをした後に告げられたのは、まさかの他国への駐在大使として家族で行くというもの。しかも来月?来月なんて、すぐではないか?!

そして、更にはその間書類は保管されるという。

ホカン?

保管・・・ということは?提出はされない。


まだ、婚約は、続けられる?


「今はこのまま保管をしておきます。

でも条件があります。」


そう言ったクラウディアの顔は、どこか子供の悪戯が成功したときの得意顔のような笑顔で・・・

こんなに溌溂とした笑顔は、本当に久しぶりに見た気がする。


だが告げられた条件の一部は、ある意味俺を崖っぷちに引き戻すものだった。


「条件としては、私がハイドランジア国へ行っている期間手紙のやり取りだけで交流となります。つまり、筆不精だの忙しいだのと言って疎かにされるのでしたら、そこまでの関係と思って婚約解消書類は提出します。

第二に、私に好きな人が現れたらその時も婚約は解消します。

手紙だけで今までの様に顔を見ることも声も聞くこともない状態でお互いの交流をすることになるんです。

私はエドワード様の顔が大好きです。

でもそれ以外を好きかと言われても、性格を知らないのでわかりません。寧ろ、今までの蔑ろにされる態度に傷ついてどちらかといえば嫌いにベクトルが寄っています。

だから、顔以外で私を好きだと思わせてほしいんです。

エドワード様がそれを望まないのでしたら、手紙も何もいりません。

私は私で、ハイドランジア国でもどこでも新しい恋を始めます。

その時には速やかに婚約は解消します。

でも、とりあえず帰国するまでは、保管ということで婚約も保留となります。」


言われていることを一つ一つ反芻する。


つまりは俺はクラウディアの顔を数年は見れないという・・・

その間の交流は、手紙のみ。

今までの様に忙しいだのなんだのと、理由を付けていたら今度こそ見切りをつけられる。

しかも離れた場所で・・・俺よりも好きな人が出来たら別れを、今度こそはっきりと決別を言い渡される。

糸のように細いぎりぎりで繋がった婚約者という繋がり。


それもクラウディアの心ひとつで、バッサリと断ち切られる。


俺が頑張る先を間違えたからこうなった。

好きにならないように努力するなんて馬鹿らしいことに捕らわれず、周りに認められるように努力してクラウディアと愛を育んでいればこんなことにはなっていなかった。


「本来なら、ここで()()に関係を断ち切ってもいいと僕は思うのですが、優しく慈悲深い姉様の意向です。爺様の国に一緒に行くということに変わりがなければ父様も母様も異論はないでしょう。

どうしますか?

止めますか?」


俺がクラウディアに何も言わないことに、挑発するようにジェイクがニヤニヤと笑って言う。

完全に挑発するつもりだ。

確かに、ここで断ち切られると絶望していた。

でも、わずかだがクラウディアもやり直ししてもいいと思うところがあると・・・

そう縋らなければ、辛い・・・


「クラウディア・・・、俺は君を必ず振り向かせるように頑張るから。だから・・・」


「エドワード様、あともう少し条件です。」


俺の決意を遮るようにそうして告げられた条件は、クラウディアの気持ちを繋いで振り向かせるのとどちらが難しいのだろう・・・


だが弱音を吐く暇はない。


ザリエル伯爵の大使期間は最低でも3年と言われている。

その間に、クラウディアの気持ちを引き寄せ追加の条件を満たさないとどうしようもない。


恋を知った俺は、なんとしてもやり遂げる。

そう自分に言い聞かせ、頷いて返事をした。











読んでくださりありがとうございます。

クラウディアの恋の行方に、エドワードの空回りな頑張りで笑えるようにしています。もともとは後日談で構想していたものです。

笑って終わるのがいいなぁと思っています。

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