『まて』をやめました 3
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あれから1週間がたち、わたしは元気に過ごしている。
昏睡状態だったというのに、起き抜けは体の筋肉がしびれていて翌日からは筋肉痛のような痛み、3日後にはそれもなくなりなぜか普通に歩けるようになっていた。
聞けば昏睡状態になってから、一度だけ聖女様に治療してもらったのが良かったのだろうと言われた。
聖女様だって!?
そうそう、ここはやっぱり日本ではないみたい。というより、まず次元が違う。
ちょっと聞いてください、異世界ですよ!ここ、どうやら異世界みたいなんです。
ということは、私、異世界転生?
日本人時代(笑)のときのことって殆どおぼえてないから、性別も何歳まで生きてどう死んだか知らない。
けど、『まぁ、いいかぁ~』的な性格のせいかすんなりと納得した。
まず見た目からして瞳の色も髪の色も色彩豊か。
金銀は当たり前、パステル調の赤青緑黄とか目がチカチカするような濃い原色タイプもいるんだわ。
因みに貴族になればなるほどキラキラカラーになるようです。平民さんは、黒髪暗い茶髪が多いんだって。
顔もどちらかといえば、欧州系の顔立ちだし。
さらにさらに、なんと!なんと!!なんとー!!!
魔法があるのです。
っていっても、かわいらしいものだって。
マッチの炎の様な火を指先にともしたり、ドライヤーの様な風を起こしたり、両手に水を出すくらいの魔力。
えええぇぇっ、折角魔法があるって聞いたから、てっきりドラゴンのように火を放ったり、稲妻とか台風みたいなのとか出せるんだと思っていた・・・
ちぇっ!つまんない。
あっ、でも瞳が貴族で魔力が多い人は、キラキラしてるって、すっごー?!見てみたい。って、ジェイクは多少だが多い方らしく、キラキラお目目だわ。
魔力があるおかげでいろんな魔道具が使えて便利な世の中だって。
因みに貴族の魔力は、平民よりも強いんだって。
って、言っても魔力で出せる水球が平民がソフトボールくらいしかだせないとしたら貴族はバスケットボールくらいの違い位だって。
ふ~~~ん。
ソッカ、スゴイネェ~~~。
っで、聖女様だ。
聖女様はそんなちっちゃな魔法とは違って比べられないくらい強大な力を持っている。そして聖女というとお約束の癒しと浄化の魔法。
魔法があると言うことはこの世界に魔獣がいる。昔、魔王がいた時代に大量生産された魔獣。魔王は勇者によって滅ぼされたけど、大量生産された魔獣は、各地に散らばったまま。随分と数を減らしたけど各地で暴れている魔獣を浄化するのが聖女様のお仕事なんだって。
あれ?魔王が倒されたら魔獣も消えるのが常套じゃ?
そう、聞いたらみんな不思議そうな顔をして聞いたことがないって・・・お父様曰く、親が死んだからって子供も同時に死なないだろ?って。なるほど、魔獣は魔王から生み出されたもので、生まれた後は繋がってるわけじゃないのね。
フ~~~ン、ソウデスカ。
今回はその聖女様の癒しの力で、落ちた体力の回復をしてもらったみたい。その時、薬の悪い作用も治してもらったみたい。
私が目覚める、2日前のことだって。
聖女様の癒しがなかったら、まだ目覚めていなかったってことよね。
ありがたやぁ~。なんかお礼したいなぁ。
「聖女様に治療してもらった時だけは、ヴィンセント家とのつながりを感謝したものだわ。」
そうリハビリがてら綺麗な庭園を散歩しながら、低い声で言ったのはお母様。
庭園。
自宅の庭が植物園みたいな庭園ですよ!
お家は広い豪邸だし、家族各自の自室のほかに沢山の客間に、応接室、サロンとかたくさんあって、一人で出歩くと迷子になるレベル。ありがたいことにメイドが付き添ってくれて遭難に至ってはいません。
今いる庭園もメイン庭園で、ほかにも第二第三とあるんだって。さらに敷地内に別邸が2つもある。
ワ~~~、スゴイナァ
クラウディア15年分の成長記録の話を一度に聞くとさすがに疲れるので、毎日少しずつ色々聞きだしているときに聖女様の話になって、聖女という言葉に何か言いかけていたジェイクだけど、それを放置してお母様は話をしていた。
「母様っ!」
低い声だけど、ニコニコしているお母様。お母様と私はならんで歩いていて、私の後ろをジェイクが付いてきていたのだけど、そのジェイクが我慢ができないと言わんばかりに大きな声を上げる。
いきなりそんな大声上げたらビックリするじゃない。
「あらジェイク、貴方たち男はいつまで隠しているつもりなの?一応、目覚めましたって知らせも出したのでしょ?もしもお見舞いに来られた時に困るのはクラウディアなのよ。わたくしはきちんと教えておくべきだと思うわ。気持ちの整理も必要でしょうし。」
「でも、あれを見ただろ!」
「そうねぇ、ちょうどいいからそのことも話しましょうか?あなた、部屋から持ってきて頂戴。」
「はい、奥様」
「さて、話が長くなるからテラスでお茶でもしながら話しましょうか?」
「母様、まだ早いと」
「こんなことはね、さっさと話してしまったほうがいいのよ。下手に隠して前のような我慢ばかりのディアに戻ってほしくないですもの。」
はて?
2人の間でどんどん話が進み、庭に面したテラスで美味しい紅茶とお菓子をいただきながら続きを話してくれることになった。
テーブルにお茶とお菓子がセットされてからすぐにメイドが持ってきた数冊の本。
色違いのパステル調の表装のそれがテーブルに置かれた。
新書くらいの大きさかな、しっかりとした表装、白い蔦模様でシンプルででも色合い的にかわいい。
「これはね、クラウディアが書いていた日記なのよ。」
そう言って渡され、中を見ると確かに内容は日記のようだった。
細く女性らしい綺麗な文字が並んでかかれているけど・・・ん?日記?
「それはね、クラウディアが5歳の時から書き続けていたみたいなの。
本当は日記なんて個人の気持ちが書かれたものを見るのはいけないことだとわかっていたのだけどね、今回の昏睡の原因が何か隠されていないか探していて、それでね、見つけて読んだの。」
そう促されて一番古いものだと渡されたそこには、さっき見たよりも子供らしい字で綴られていた。
読んでくださりありがとうございます
明日から朝晩2回更新です。
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