『まて』をさせられました 27
ここからは、サクサク行きます。早く時系列現在にもどしたい。
◆エドワード視点◆
それから手ぶらでクラウディアの茶会に行ったが、本人は手土産もない婚約者に特に落胆した顔も見せず俺の顔をうっとりと見つめて楽しそうに過ごした。
幼い彼女は、婚約者からの贈り物を知らない可能性がある。
ならば好都合だから、このまま素知らぬ振りで過ごすとしよう。
クラウディアは言葉の端々に、会うだけで幸せだと俺と目が合うと頬を染めて幸せそうに微笑んでいた。
その微笑みを目に映すたび、俺の心は浮き立っていた。
喜びと満足感で次回の約束をして、伯爵邸を後にした。
「ぼっちゃん、お気を付けください。」
タウンハウスに帰りつき、馬車から降りた俺を見た老執事がこっそりと忠告を口にした。
曰く、俺の顔は今まで見たことのない喜びと幸せそうな恋する男の顔であると。
老執事は、父上から俺のことを見張るように命を受けていると。
俺がクラウディアに心奪われるようなことがないように、恋する情けない男にならないように見張れと。
「坊ちゃんの顔はまさしくそれですぞ。
その顔を見られたならば、旦那様より婚約は破棄とされましょう。」
そう言われて、頭から冷えていく感覚がする。
今日一日、前回の顔合わせと数えてたった2回あっただけの女の子に俺は心を許しかけていた。
このまま回数を重ねれば間違いなく篭絡される。
そんな情けない考えが頭をよぎる。
まだ10歳とは言えど様々なジャンルの書物を読み、政治経済はもちろん人心掌握の為にと面白くもない市井の恋愛小説とやらも目に入れた。
そこに描かれている、乙女に恋する男たちはいいように操られているようにしか見えず情けないという感想を抱いた。
恋に落ちる男。
それに俺がなりかけていた?
「・・・ぁぁ、気を付けよう・・・」
やっと出せた言葉は、あまりにも小さな声だった。
薄暗くなった自宅のエントランスで今日の午後一杯ザリエル家にいたことを知った。
時間の経過も気が付かないほど、クラウディアに心を奪われていたのか・・・俺は?
驚き言葉を出せずにいる俺を、いつもと変わらぬ澄ました表情の老執事は小さくお気を付けてとだけ声をかけた。
そっとエントランスから外を見ると、出掛けに散らばった残骸は跡形も無く片付けられていた。
タウンハウスで働く使用人は、老執事の教育が徹底されて余計な無駄口をきかずに仕事を遂行する。主人に似た性質の使用人たちだ。人の目につく入り口付近のゴミをそのままにしておくなどあり得ない。
「可哀そうなことをしたな・・・」
だが、いつもは思わないことが口から洩れる。
余計な掃除をさせられた使用人に向けてか・・・
丹精込めて育てた花をダメにされた庭師に向けてか・・・
それとも、花そのものに向けてか・・・
自室に入ると、普通の10歳の子供が使うには大きく重厚な文机に小さな花瓶があった。
クリーム色とオレンジのガーベラと紫の小花。
花束の時よりも小さくさりげなく置かれているが、普段からこの部屋には華やかなものなど一つもない。異様な光景。
だがそのガーベラは、やはりクラウディアを思わせた。
髪色に似たクリーム色よりも、元気がいっぱいで満面に笑うオレンジがクラウディアに似ている。
そこに小さな紙片があった。
武骨な文字で書かれていたのは、誰かからの俺への励ましに思えた。
父上の言うとおり、情けない恋する男にならないように頑張るしかない。
レティがヴィクター殿下の正妃として結婚する日まで・・・
レティの為、父上の為・・・
俺が、一緒にいられる為・・・・
『ガーベラの花言葉は、希望。
オレンジのガーベラには、あなたは私の輝く太陽、そして、忍耐です。』
読んで下さりありがとうございます。
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小話
エドパパは、エドワードとクラウディアが婚約した翌日から、ディアパパから休む暇がないような問題提議をされ忙しくしていました。
その為イライラMAXでした。
でも関係ない物に当たっちゃダメだよねぇ。そんな姿を子供の前でするなんて、ダメな大人の見本です。真似しないようにね(笑)ヽ( ・∀・)ノハーイ




