『まて』をやめました 23
まぁた~泣かせて、いけないなぁ(ってまた私かっ!)
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まさかの異世界転生・転移ランキング デイリーで2位になりました。
ありがとうございます。
「うぇっぐっ、ひっく、ん~~っく・・・」
レティシア様に促されて自室に戻るとこれでもかと、決壊したダムのように溢れ出る涙。
泣き止もうとすればするほど、溢れ出てしまい収拾がつかない。
「あぁ姉様、そんなにこすらないで。クレア、濡れたタオルを頼む。」
止まらない涙を両手で無理やり止めようと、手で擦ったらジェイクに止められた。ジェイクの指示を受けてすぐに差し出されたタオルを涙溢れる目に当てられる。
冷たい濡れタオルで、スーッと涙が引いていくような気がした。
泣いて赤くなり熱を持っていた箇所が、冷たさに落ち着いてくる。
「姉様、待っててね。」
濡れタオルは熱を吸い取ってすぐに温くなった。
そこにジェイクが断りを入れたかと思うと視界を遮っているタオルに手を乗せたみたいだ。
軽い重みと圧迫の後、そこからひんやりとしてくる。
「ジェイク、これって魔法?」
冷えすぎないちょうどいいひんやりとした感触。
温くなったタオルが何もしていないのに、すぐに冷たくなり目元の熱を奪っていく。
「うんそうだよ。僕もそれなりに使えるからね。」
そういえば、ジェイクは水や氷を出す魔法が得意だった。小さなころに真夏に雪を降らせて魔力切れを起こしかけて倒れたこともあったな。
クスッと、思い出したことに笑いが漏れるが同時にじんわりとタオルをまた温かい涙が濡らす。
やっぱり、記憶が戻ってる・・・
こんな子供の頃の何気ない事、日記に書いてなかったもの。
でも覚えている。
エドワードに会えなくて寂しがる私を笑わせたくて、ジェイクが一生懸命降らせた雪。
真夏の昼間の強い日差しに、振る雪は幻想的でキラキラして綺麗だった。
昔から綺麗なものが好きな私に、魔法が苦手ででもジェイクは練習を積んで水を使って虹を作ってくれたり、噴水の様な水芸をしてみたり楽しませてくれた。
落ち込む私を元気づけようと、最初は苦手だった魔法を鍛錬して今では魔力も増えて細かい繊細な魔法が使えるようになっている。
それなのに、今までの私は本当にエドワードしか見えていなかったみたいだ。
両親だって、そう。
家族が他国に出掛ける時、留守番をすると我儘で残る私を心配して、いつの間にか通信用魔道具である魔水盆が置かれていた。これは鏡の前に置くとその鏡が通信先と繋がって画面を見ながらライブで会話が出来ると言うもの。今考えるととてもお高いものだ。それを私が留守番をするからと、両親が購入してくれた。だから、夜に出先の両親やジェイクと会話が出来て寂しさも和らいだ。
それに気づかない私は、やっぱり薄情な娘だった。
これなら、記憶が無くなってよかったって言われても仕方がない。
そんな薄情な感情、無くなったほうがいい。
でも、思い出してしまった。
だから、今度は間違えたりしない。
「記憶、戻ってる?」
恐る恐る出された声は、ジェイクの心を表している。
昔のように『エドワード様第一主義』な私に戻ってるのか心配してるんだよね。
「・・・うん、記憶がね、戻ってる、みたい。」
タオルで遮られていても、周りが息をのむのが分かった。
因みにジェイクの魔法が揺らいでちょっと冷たすぎるぞ。急速冷凍されたみたいに冷たすぎてぴゃってなった。
「大丈夫よ。
もう昔みたいに、エドワード様に固執していないから。私が大切と思っているのは、好きなのは家族との時間だから安心して・・・
・・・・・・いろいろごめんね、ジェイク。」
見えないけどこの辺かな?って手を伸ばすと私の意図が分かったのか手のひらにすり寄る。
ふわふわの髪をかき混ぜるように撫でる。
私はこのふわふの髪を撫でるのが大好きで、いつも撫でてた。このくらいの男の子は普通、姉に頭を撫でられるなんて恥ずかしがって嫌がるだろうに、ジェイクは手を伸ばしただけでいつもそこにすり寄ってくる。
これもたぶん、私を喜ばせようとしてるからなんだよね。
色々に、本当にいろんな意味を込めて口にすると、くぐもった嗚咽が聞こえる。
私の気持ちをいつも正しく理解してくれる。
「お嬢様・・・よかったです。」
見えないけど、其処此処からも聞こえる声は喜んでいるだろう声と嗚咽が混じって聞こえる。みんな喜んでるでいいよね。
そっとタオルを外すと、そこには私と同じ紫の瞳を潤ませて大粒の涙を流しているジェイクがやっぱりいた。
「ジェイク、お姉ちゃんだよ。ただいま・・・」
そう言って腕を広げるとスポッと私の胸に飛び込んでくる。
可愛い、そして頼りがいのある弟。
大好きよ。
「姉様ぁ・・・」
泣いているがその声は嬉しそうだ。
いつも情けないお姉ちゃんでごめんね。
今まで以上に甘やかしてあげるから、許してね。
クレアも長年伯爵家に仕えている使用人たちも、目尻を押さえている。
うんうん、本当に心配かけました。
心を入れ替えて、これからは我慢なんてしない『新生クラウディア』をよろしくお願いします。
そんな気持ちで見まわすと、みんな笑顔で頷いてくれる。
本当に私の気持ちをよく読んでくれる、できた皆さんだわ。
「うふふっ、ジェイク。これからもよろしくね。」
うんうんと声が出ないけど、嬉しそうに頷く愛おしい家族。
私たちがこうして暖かな空気に包まれている中、我が家の一角では同じ敷地内とは思えないほどのブリザードが吹き荒れていた。
「好きな子を苛めるなんて、いけない子ね。
わたくしがお説教して差し上げますわ。このままですと今度は貴方の方が『まて』させられますわよ。」
ひんやりとするような壮絶美女の微笑みは、見慣れているはずの周辺の騎士たちもを震えさせるほど冷たく怒りを含んでいた。
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