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『まて』をやめました 16

よくある、玉虫色の状態。

だから救える人もいます。




お父様は確かに優秀な人なんだろう。

聞く人聞く人すべてが声を揃えて「ザリエル伯爵が交渉しても成立しない話は誰にも出来ない」と言われていた。確かにそれ程の交渉術を持ち合わすお父様なら、騎士団や警邏隊の通常の捜査以外の方法で真相を見つけられそう。

・・・・・・それに家族愛の執念も込めて。


犯人の目星も証拠も揃っているというのに、捕縛しなかったのは現行犯逮捕したかったからかな?

でも今回のお茶会でサビーナ様が突っ走らなかったらどうしたのかな?

他にも方法を考えていたのかな?


私の疑問に心痛な顔をするレティシア様。

ああ、なんて美しい。

悲しそうな憂い顔も美しい。

そんな顔をさせたくないけどさせているのが、私のさっきの発言ならスイマセンという気もするがあまりの美しさに胸が締め付けられるような。


「・・・姉様」


私の気持ちを正しく理解しているジェイクが呆れた声を出す。

すまない、お姉ちゃんは美しいものに弱いのだよ。


「はあ、姉様。・・・報告書の、協力者の欄を見て。」


ため息を一つした後、言葉を選ぶように言われて改めて報告書の言われた箇所を見る。

そこには、毒や薬を提供した人たちの名前と薬を調合した人の名前が別枠で書かれていた。


出し合った毒や薬の効き目や量は、差があり明らかな殺意があるとわかる強力な毒が3種入っていた。

そしてそれを調合した薬草学に詳しい子爵という人は、効き目を弱くしていたらしい。


「その子爵の名前・・・、わかる?」


そう言われて改めて名を見る。


───アボット子爵。

薬草学治療魔法に精通した人物。王立治療院副官。陛下の医師団にも名を連ねる。


どこかで、最近聞いたような・・・名前?


記憶のどこかに引っかかってるような・・・すっきりしない。

出そうで出ない・・・

喉に小さな小骨が引っかかているような・・・

もう少しで手が届くのに・・・


「・・・ローラ・アボット・・・」


ミリアム様が小さくつぶやいた名前には、はっきりと憶えがある。私の大切なお友達だ!って、あれ?アボット?ローラは子爵令嬢のはず、アボット子爵・・・・・・ローラのお父さん?


「それって、ローラ・・・の、・・・お父さん、なの?」


自らの口から出る言葉を信じたくない。

記憶がなくなっても友達でいたいと思うような、ローラのお父さんがこのクラウディア傷害事件にかかわっているなんて・・・

頭の中がしびれるような思考が止まったような気がする。指先がしびて戦慄く感覚。


「子爵は脅されて無理やり手伝わされたそうです。」


強張る顔で固まった私に静かな声でミリアム様が続ける。


「詳しい仔細は省きますが、家の存続に纏わる秘め事を知られて脅されたそうです。

脅されたと言ってもそこは命の尊さを口にする治療師。人を傷つけるための調合をおいそれと素直にする事はありませんでした。」


アボット子爵は、調合を嫌々請け負う様に見せて、実は毒薬の効果を薄めるようにしていた。

脅迫され無理矢理連れていかれ、協力者の別宅で集められた毒や薬を調合するよう指示された。無味無臭、且つ即死に成らず時間差で効くようにジワジワ死に至るよう作れ、と。指示された内容は、難しいはずのものだが用意されたもの(毒や薬)が一般的なものばかりだったので子爵にとっては容易かった。

さらにパイル伯爵は用心深く、子爵にも毒薬を出すよう強制した。彼は仕方なくを装いある毒草をだした。

子爵が用意した毒草は、一般的に毒に当たるが実は、他の毒と混ぜることで解毒剤になると最近発見されたもの。

それを使い、他の毒の効果を消してほんのちょっと具合が悪くなる程度に調整した。勿論、こっそりと解毒剤も作り使用されれば相手を探し出し、それを使う予定だった。

予定外だったのは、倒れたクラウディアをザリエル伯爵の要請で診察した際、効かなかったということだった。

子爵曰く、調整した毒薬に後から何かが加えられた。その作用によって昏睡状態になり、解毒剤が効かなかったみたいだと見解を示した。

しかも子爵は、ザリエル伯爵に言われて初めて毒薬を使われたのがクラウディアだと知った。毒薬の使用先は知らされていなかった子爵。

娘ローラの親友であり、大恩のあるザリエル伯爵の娘、クラウディアに使用されたことにショックを受けていた。

脅されてとはいえ、作った毒薬に倒れたクラウディア。解毒剤も効かない。さらに子爵がザリエル伯爵に呼ばれたことに気がついたパイル伯爵側から監視をされて、治療も出来なくなってしまった。自首して告発したくとも、万一、秘密が漏れ家族に害が及んだらと悩み、罪の意識との挾間で頭を抱える日々をすごしていた。

彼にとっては、クラウディアが聖女の力で回復したことは僥幸であったが、それで罪がなくなる訳でないと思っていた。

伯爵逮捕の一報を聞いた子爵は、残った毒や薬などの証拠品を持って騎士団に自首してきた。彼が持ち込んだ物的証拠により捕縛がスムーズにいった。



ただ、一人を除いては・・・・







読んで下さりありがとうございます。

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