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序章
いづれの御時にか、
鬼、あやかし、物の怪と呼ばれるモノどもあり。
またそれを退治する陰陽師あり。
その中のある陰陽師曰く、
「もののけぇ〜?そんなものいねぇよ。」
ここにはその者の話を紡ぎゆくとせむ。
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「あ〜、だっる。」
とても姫君とは思えない声をあげながら褥から起き上がる。
貴族の朝は早い。
この生活を初めて三年程経つが、辛いものは辛い。
「響様、言葉遣い!」
齢十六の侍女、梅に小突かれる。
「響様、お行事が悪いですよ。」
三十路の侍女、白菊に小言を頂く。
まだ寅の刻である。
いくらなんでも早すぎではないだろうか。
しかし、自分への待遇を考えると怠けようとは思わない。
お勤めの準備を始める。
侍女たちに手伝って貰いながら髪を高く結い上げ、顔を白く塗り、歯を黒く染めて紅を引く。立ち烏帽子をかぶり、十二単ではなく、束帯に身を包む。そうして一人の青年が完成する。
「「いってらっしゃいませ。」」
二人の声と同時に牛車が動き出す。
今日はどんな面白い話を聞けるだろうか。
響は少し楽しみにしながら宮廷に向かうのであった。




