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おにぎり日和   作者: ひろゆき
8/41

 一食目  ーー  どういうことだよ、これは?  ーー (7)

 嫌だ、無理だ、と全力で否定するも、完全に興味がないわけではない。

 ちょっとした好奇心? みたいなものはある。

            7



 弁当を作る気なんてまったくない。

 けれども、改めて「作れば」と言われると、多少は考えてしまう。

「……すごくないか、これ」

 つい驚嘆の声がもれてしまった。

 リビングから部屋に戻ってから、十分ほど経ったあとである。

 結局、スナック菓子は半分ほど姉に奪われてしまった。満足げな逆で嫌味な笑みを浮かべて返されると、食欲が失せてしまい、何も食べないまま部屋に戻っていた。

 そして、頭に渦巻くモヤモヤを晴らそうと、スマホに手が伸びていた。

 スマホに写し出されるのは弁当の写真である。

 ベッドに寝そべりながら見ているのは、ネットのレシピサイトであり、僕の想像していた以上の綺麗さに声がもれていた。

 どの弁当も、自分が食べていたものや、藤田が食べていたのをイメージしてしまっていた。

 藤田の言葉を借りるならば、揚げ物をメインとした茶色がメインであり、僕もそれで充分だと思っていた。

 でも違っていた。

「……こんなに色があるのか?」

 スクロールしていると、鮮やかな弁当が並んでいる。レタスやトマト。卵と、様々なおかずが色とりどりに光っていた。

 確かに幼稚園、小学校低学年のころは、母親が僕を喜ばせようと、キャラ弁なる物を作ってくれていた。

 子供のころ、クラスのなかで一際レベルの高いキャラ弁を持ってくる子が数人いた。

 その子らはやはり人気者となり、周りの子供たちからどこか崇められる存在となっていた。

 それを隅の方で眺めていた僕。子供ながらに強がって平静を装っていたが、内心は羨ましがっていたのが懐かしい。

 そこで母親に無理を言ってキャラ弁を頼んだこともある。

 今、思うと大変だったんだろうな。

 そうした不満が今になって爆発したのか?

 でも、それは幼稚園のころの話なのだが。

 疑問を残しながらスクロールを続ける。

 キャラ弁は知っていたので、そうした写真があるのも予想していたけれど、眺めているのはそれを遙かに上回っていた。

 キャラ弁以上に華やかな弁当が並んでいたのである。

「こんなの毎朝、作ってるってことなのか?」

 なめていた。完全になめていた。

 正直なところ、冷凍食品を詰めるだけでいいだろうと思っていたので。

「明日もコンビニかな……」

 諦めて結論づけようとしたとき、ふと目線が逸れた。

 何気なくテレビを眺めてしまう。今は電源を切っているので、画面は黒く、蛍光灯の明かりで反射した時分の姿が映っている。

 顎に手を当て、何かを思案している無様な姿が。

 よく考えてみろ。毎日コンビニというのは、飽きないのか? いや、確かに種類も多ければ、新作も出る。けど、近くのコンビニは一軒だけだぞ。

 ほぼ毎日コンビニスイーツを食べている藤田も、「あそこのプリンはちょっと飽きた」と苦笑いしていたこともなかったか。

 それで足を伸ばして別の店に行った、と笑っていなかったか。

 僕に飽きが来ないと言えるのか? そもそも、毎朝コンビニに寄るのも面倒ではないのか?

 じっくり考えろ。

 ……どうする?

 完全に自分の考えよりも、現実は上をいっている。

 想像以上なことに驚きしかないじゃないか。

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