一食目 ーー どういうことだよ、これは? ーー (4)
もう期待はできない。
それでも学校には行かなければいけない。
じゃぁ、お昼の問題は?
4
これからの大きな問題となるのだろうか?
胸に渦巻く不安と怒りを隠しながら、学校に向かうなか、近くのコンビニへと足を向けた。
不幸中の幸いとでもいうべきか、家を出る前に母親から五百円を渡されていた。
僕は五百円では足りず、千円をくれ、とせがんだ。
こちらとて、ずっと素直に訊いているほど、真面目ではない。それなりの金額を請求すると、「うるさい」と一蹴され、そこで交渉は終わってしまった。
思い出すだけでも苛立ちで顔が歪みそうである。
コンビニの扉が開き、冷房が頬に触れても、気持ちは一向に鎮まってくれそうにない。
まったく、いつの時代の金銭感覚でいるのか。それだけでは足りないというのに。
買うべき物は弁当にお菓子。今はチョコがほしい。それに何か飲み物。
まったく、全然足りないじゃないか。
まぁ、自分の小遣いから賄え、と言われなかっただけ幸いかもしれないが。
渋々、嫌々ではあるのだが自分納得させ、店内を回った。まだ眉間にシワを寄せたままで。
僕にとって、どのコンビニでも店内を進むルートは決まっていた。
まずは雑誌コーナーに進み、気になった雑誌を立ち読みする。今日も本当なら気になる雑誌があったが時間はなく、諦めた。
次はスナック菓子にふと足が止まった。
「…………」
悩んでしまう。
期間限定のスナック菓子が売っていた。
ディフォルメされた牛が躍る絵が描かれたビーフ味……。誘ってくる。「買え」と。
……買うべきか、買わない……。
気づけば手に取ってしまっていた。
そこでようやく弁当の売り場に体が向かった。
普段、コンビニ弁当を買う機械はなく、皮肉ながら新鮮に見えてしまう。
定番の海苔弁当、幕の内弁当、唐揚げにハンバーグ。
色とりどりの弁当が僕を誘惑し、悔しいが目を輝かせてしまう。
悔しいが五百円で僕の空腹を満たしてくれる商品はあっても、コンビニ弁当を学校に持っていくのはちょっと物理的に難しい。
普通の弁当よりカバンに入れづらい。何より下手をすれば、中身が片方に寄ってしまいそうだ。
ここは弁当を諦め、おにぎりかパンにしよう。
辺りを見渡し、まずはパンの場所に向かった。パンやサンドイッチなら、校売でも買えるが、やはり昼休みに群がる人の多さからは逃れたい。
今日はパンにしておこう。
やはりメロンパン、クリームパン、コロネやカツサンドもいい。
僕の胃が昼休みに向け、パンを求め始めたそのとき、不意に足が止まり、視線を奪われる。
おにぎりの売り場に。
なんだろう、別におにぎりが訴えているわけではないが、惹きつけられてしまう。
おにぎりってこんなに種類があったか?
テレビのCMで何度か見たことはあった。“さらに美味しくなった”という謳い文句が耳に残っている。でも、そこまで気になるものでもなかった。しかしーー
補充されたばかりなのか、思いのほか数の多さに驚嘆してしまう。
梅に鮭、カツオという定番から、チャーハンといった物に、僕の目尻は下がってしまう。
気持ちが高ぶっていった。
「ーーよしっ」
つい数秒前まではパンにしようとしていたが、ここで一気におにぎりへと軍配は上がる。
コンビニほど助けになるものはない。
ここならば、不安を拭ってくれる。
助けはここだけ?