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おにぎり日和   作者: ひろゆき
5/41

 一食目  ーー  どういうことだよ、これは?  ーー (4)

 もう期待はできない。

 それでも学校には行かなければいけない。

 じゃぁ、お昼の問題は?

            4



 これからの大きな問題となるのだろうか?

 胸に渦巻く不安と怒りを隠しながら、学校に向かうなか、近くのコンビニへと足を向けた。

 不幸中の幸いとでもいうべきか、家を出る前に母親から五百円を渡されていた。

 僕は五百円では足りず、千円をくれ、とせがんだ。

 こちらとて、ずっと素直に訊いているほど、真面目ではない。それなりの金額を請求すると、「うるさい」と一蹴され、そこで交渉は終わってしまった。

 思い出すだけでも苛立ちで顔が歪みそうである。

 コンビニの扉が開き、冷房が頬に触れても、気持ちは一向に鎮まってくれそうにない。

 まったく、いつの時代の金銭感覚でいるのか。それだけでは足りないというのに。

 買うべき物は弁当にお菓子。今はチョコがほしい。それに何か飲み物。

 まったく、全然足りないじゃないか。

 まぁ、自分の小遣いから賄え、と言われなかっただけ幸いかもしれないが。

 渋々、嫌々ではあるのだが自分納得させ、店内を回った。まだ眉間にシワを寄せたままで。

 僕にとって、どのコンビニでも店内を進むルートは決まっていた。

 まずは雑誌コーナーに進み、気になった雑誌を立ち読みする。今日も本当なら気になる雑誌があったが時間はなく、諦めた。

 次はスナック菓子にふと足が止まった。

「…………」

 悩んでしまう。

 期間限定のスナック菓子が売っていた。

 ディフォルメされた牛が躍る絵が描かれたビーフ味……。誘ってくる。「買え」と。

 ……買うべきか、買わない……。

 気づけば手に取ってしまっていた。

 そこでようやく弁当の売り場に体が向かった。

 普段、コンビニ弁当を買う機械はなく、皮肉ながら新鮮に見えてしまう。

 定番の海苔弁当、幕の内弁当、唐揚げにハンバーグ。

 色とりどりの弁当が僕を誘惑し、悔しいが目を輝かせてしまう。

 悔しいが五百円で僕の空腹を満たしてくれる商品はあっても、コンビニ弁当を学校に持っていくのはちょっと物理的に難しい。

 普通の弁当よりカバンに入れづらい。何より下手をすれば、中身が片方に寄ってしまいそうだ。

 ここは弁当を諦め、おにぎりかパンにしよう。

 辺りを見渡し、まずはパンの場所に向かった。パンやサンドイッチなら、校売でも買えるが、やはり昼休みに群がる人の多さからは逃れたい。

 今日はパンにしておこう。

 やはりメロンパン、クリームパン、コロネやカツサンドもいい。

 僕の胃が昼休みに向け、パンを求め始めたそのとき、不意に足が止まり、視線を奪われる。

 おにぎりの売り場に。

 なんだろう、別におにぎりが訴えているわけではないが、惹きつけられてしまう。

 おにぎりってこんなに種類があったか?

 テレビのCMで何度か見たことはあった。“さらに美味しくなった”という謳い文句が耳に残っている。でも、そこまで気になるものでもなかった。しかしーー

 補充されたばかりなのか、思いのほか数の多さに驚嘆してしまう。

 梅に鮭、カツオという定番から、チャーハンといった物に、僕の目尻は下がってしまう。

 気持ちが高ぶっていった。

「ーーよしっ」

 つい数秒前まではパンにしようとしていたが、ここで一気におにぎりへと軍配は上がる。

 コンビニほど助けになるものはない。

 ここならば、不安を拭ってくれる。

 助けはここだけ?

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