表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにぎり日和   作者: ひろゆき
4/41

 一食目  ーー  どういうことだよ、これは?  ーー (3)

 いつもの朝。

 あくびを出さずに起きられれば、問題なんてない。

 それがいつものことであるんだから。

            3



 スマホのアラームがけたたましく叫び声を上げる。

 眉間にこれでもか、と深いシワを彫ってようやく目を開けた。

 何度も瞬きを繰り返し、霞んでいた視界が晴れていくと、ようやくベッドから上体を起こした。

 大きく背伸びをすると、つられてあくびも出てしまう。

「……眠い……」

 そこでようやくベッドから起き上がった。まったく、嫌なルーティンである。



 いつになれば、あくびを出さずにすむ日がくるんだ、と自身を罵りながらリビングに出てきたときである。

 もう父親は起きていて、テーブルで新聞を読んでいる。

 コーヒーの香りが鼻を突いた。

 トーストに塗られたバターの香りもしている。

 なんだ、ちゃんと作ってあるじゃん。

 父親は自分で料理をする人物じゃない。そんな父親の朝ご飯を作るのは、母親しかいない。

「ーーえっ?」 

 安堵から鼻頭を擦ろうとしたとき、足が止まった。

 弁当が……。

「ーーないじゃんっ」

 唖然として言葉を失っていた僕の後ろで、叫び声を上げたのは姉。一瞬、目の前が真っ白になりかけていると、破裂しそうな声に息が詰まった。

「ちょっ、お母さん、お弁当はっ」

 鬼気迫る声で詰める姉。さすがに姉も出勤前で髪も容姿もしっかりとしていた。

「だから、言ったでしょ昨日。今日からあんたたちのお弁当は自分土なんとかしなさいって」

「ーー嘘でしょっ」

「ーー冗談だろっ」

 姉と僕の声が不協和音として重なり響く。

 キッチンに立つ母親は気にせず、僕らの朝ご飯の用意をしていた。

 弁当は作らないと言っているのに、キッチンに立っているのである。しかもエプロン姿で。

 朝ご飯を作ってくれている。じゃぁ、なんで弁当は作ってくれないんだ……?

「ほら、立っていないで、早く食べてちょうだいよ」

 途方に暮れる僕を急かす母親。温厚な口調にも有無を言わさないという雰囲気に従うしかない。

「ちょっと、朝作ってくれるんだったら、ついでにお弁当もさ」

 それでも姉は食い迫るが、母親は聞こうともしない。無視をしつつコーヒーを入れていた。

「さぁ、早くっ」

「もうっ」

 低く唸るだけが最低限の抵抗でしかなかった。

 弁当は?

 あれはただの冗談でしかないんだろ。

 本当に用意していないなんて、信じることができない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ