六食目 ーー おにぎりを握ること ーー (3)
今日はちょっとした挑戦である。
これまでなら、あまりしなかったこと。
3
その後の藤田から受けた質問の嵐は、陰湿な取り調べでしかなかった。
あの場を乗り切るための手段としては、福原の発言は突発的ではあったけど、結果的に乗り越えられた。
それでも、福原のことは少し恨みたくなる。
勘弁してほしい。藤田がうるさいじゃないか。
次の日の朝。
今日もまたあらぬ疑いをかけられるのだと、僕を憂鬱にさせる。
早くおにぎりを作り、嫌なことは忘れてしまおう。
僕をこんな気持ちにさせた福原を恨みたくなるけど、昨日の帰り際、あることを教えてくれた。
今日はそれを試してみようと思う。
冷蔵庫から取り出したのは、薄切りの豚バラ肉。意外にも主に必要なのはこれだけ。
そして、いつものように炊けたご飯をボールに移し、そこに白ゴマを適量入れてかき混ぜる。
それを今日は俵型に握り、そして、今日は普通よりも少し小振りにしておくことを忘れずに。
今度は豚バラ肉をまな板の上に数枚敷く。そこに俵型に握ったおにぎりを置いて巻いていく。
できるだけお米が隠れ、隙間を作らないようにしっかりと巻く。
あとは調味料である。小皿に醤油、砂糖、みりんに少量のおろしショウガを入れて混ぜておく。
準備ができれば、フライパンに油を敷いて火を入れる。
フライパンに熱が通れば、肉巻きおにぎりを入れ、お肉に火が通るように焼いていく。
……さすがに肉ばっかりもダメか?
箸でおにぎりを転がしながら、ふとそんなことを考えてしまう。
火が通ると、肉から出た油を一度拭き取り、先に合わせておいた調味料を入れ、照り焼きにしていく。
コーティング、コーティングっと。
完成したのは肉巻きおにぎりであった。
実は昨日、藤田によって途切れてしまったとき、福原は僕が肉が好きなら、こういうのもある、と伝えようとしてくれていた。
昨日の帰り際、こっそりと教えてくれたのである。
これまでネットでレシピを見ていても、ちょっと気にはしていても、あまり乗る気にならず止めていた。
福原の助言で挑戦してみたのである。
あとはこれだけで終わっておくべきかが問題である。
助言されると、本当に嬉しい。
迷っていても、一歩踏み出せずにいたから。




