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おにぎり日和   作者: ひろゆき


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38/41

 六食目  ーー  おにぎりを握ること  ーー (3)

 今日はちょっとした挑戦である。

 これまでなら、あまりしなかったこと。

            3



 その後の藤田から受けた質問の嵐は、陰湿な取り調べでしかなかった。

 あの場を乗り切るための手段としては、福原の発言は突発的ではあったけど、結果的に乗り越えられた。

 それでも、福原のことは少し恨みたくなる。

 勘弁してほしい。藤田がうるさいじゃないか。



 次の日の朝。

 今日もまたあらぬ疑いをかけられるのだと、僕を憂鬱にさせる。

 早くおにぎりを作り、嫌なことは忘れてしまおう。

 僕をこんな気持ちにさせた福原を恨みたくなるけど、昨日の帰り際、あることを教えてくれた。

 今日はそれを試してみようと思う。

 冷蔵庫から取り出したのは、薄切りの豚バラ肉。意外にも主に必要なのはこれだけ。

 そして、いつものように炊けたご飯をボールに移し、そこに白ゴマを適量入れてかき混ぜる。

 それを今日は俵型に握り、そして、今日は普通よりも少し小振りにしておくことを忘れずに。

 今度は豚バラ肉をまな板の上に数枚敷く。そこに俵型に握ったおにぎりを置いて巻いていく。

 できるだけお米が隠れ、隙間を作らないようにしっかりと巻く。

 あとは調味料である。小皿に醤油、砂糖、みりんに少量のおろしショウガを入れて混ぜておく。

 準備ができれば、フライパンに油を敷いて火を入れる。

 フライパンに熱が通れば、肉巻きおにぎりを入れ、お肉に火が通るように焼いていく。

 ……さすがに肉ばっかりもダメか?

 箸でおにぎりを転がしながら、ふとそんなことを考えてしまう。

 火が通ると、肉から出た油を一度拭き取り、先に合わせておいた調味料を入れ、照り焼きにしていく。

 コーティング、コーティングっと。

 完成したのは肉巻きおにぎりであった。

 実は昨日、藤田によって途切れてしまったとき、福原は僕が肉が好きなら、こういうのもある、と伝えようとしてくれていた。

 昨日の帰り際、こっそりと教えてくれたのである。

 これまでネットでレシピを見ていても、ちょっと気にはしていても、あまり乗る気にならず止めていた。

 福原の助言で挑戦してみたのである。

 あとはこれだけで終わっておくべきかが問題である。

 助言されると、本当に嬉しい。

 迷っていても、一歩踏み出せずにいたから。

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