六食目 ーー おにぎりを握ること ーー (1)
淡い期待を持ってはいけないものである。
本当に。
六食目
1
サンドイッチを作ってから、三日が経っていた。
あの日、姉の一言に感じた予感は、これからも姉の分を作り続けなければいけない絶望であった。
恋人に見せるなら気持ちも変わるか、という淡い希望はすぐさま断たれたのである。
当然ながら、今日も僕と姉の二人分のおにぎりを作っていた。
今日はちょっとお助けの具材を使うことにした。
それは梅しそのふりかけである。
それをご飯を入れたボールに入れる。紫色がご飯に広がると、鼻を突き通るいい香りが僕の頬を緩ませた。
そこにシラスを入れる。
今思うと、シラスも卵と並んで頻度が多いな、と混ぜ込んだご飯を眺めて嘲笑せずにはいられない。
あとはいつものように手の平にラップを広げ、握っていく。
ただ、今日はいつもみたく三角形にはせず、俵型の形に握った。いつもより小振りな代わりに、数を多く。
そしてこれには焼き海苔ではなく、青じそを海苔代わりに撒こうと思った。青じその大きさを考え、小振りの俵型にしていた。
これは以前、しそを刻んで混ぜていたときに、ふと思いついたのを、今日試してみた。
もう一種類作ろうと思い、ボールにご飯を入れる。
そこに入れるのは具材ではなく醤油。
まずは小皿に醤油とみりんを少し入れて、混ぜてからご飯に加えて混ぜていく。
白いお米の全体に色が染まっていくと、それをおにぎりとして握っていく。こちらは三角形で。
茶色のおにぎりができると、そこで終わりではなく、それをトースターへ移動させる。
今日はこいつを焼おにぎりにしようと考えた。
トースターに火を入れ、焼き目を気にしつつ、様子を伺っていく。
半分ほど火が通ったところで蓋を開き、ハケで醤油を塗っていく。
蓋を締めて焦げ目がつくほどに火を通し、出来上がりと。
トースターを開くと、醤油の焦げた香ばしい匂いは、シソとはまた違って鼻を刺激した。
自然と頬が綻んでしまう。
よし。これで完成である。
変におにぎりにバリエーションが増えている気がしてしまう。




