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おにぎり日和   作者: ひろゆき


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35/41

 五食目  ーー  まぁ、たまには、ね  ーー (7)

 面倒な日がようやく終わってくれる。

            7



 福原の寛大な態度には感謝しかなかった。

 僕がおにぎりを作っていることに驚く福原に、厚かましいけれど一つ、頼みごとをした。

 できれば、このことは秘密にしてほしいと。

 確かに母親が作る弁当とは違う雰囲気が出ていても、やはりバレたくはない。

 特に藤田にバレるのは恐れてしまう。福原は肯定的になってくれても、奴は違う。

 より拍車をかけて茶化してくるのは明白である。

 ここは黙っていてくれ、福原に懇願すると、快く頷いてくれた。「心配しすぎだよ」と、笑いながらも。



 普段より多めに弁当を作る面倒な日であり、想定外の出来事に肝を冷やした日でもあった。

 そんな日がようやく終わろうとしていた。

 帰って来た姉の反応を残して。

「あんた、やってくれたわね」

 リビングに入ってきた姉は、開口一番、ソファーに座る僕に怒鳴ってきた。

 叱責されるのは覚悟していたので、まったく響きはしなかった。

 いや、むしろ待っていたのかもしれず、無視をしてテレビを見続けた。

「何? 変なものでも入れてたの?」

 いつものように本を見ていた母親が入ってきた。中身を知らないからだ。

「ーーそう。今日、おにぎりじゃなくて、サンドイッチだったのよ」

 そうだ。絶対困っただろ。

「ーーへぇ。あぁ、それで今朝はご飯が炊いていなかったのね」

「ほんと、困ったわよ。こっちはおにぎりだって思っていたんだからさ」

 乱暴に椅子に荷物を置く様子から、かなり苛立っているのだろう。

 当然だな。それが目的でそうしたのだから。

「ーー引かれたか?」

 わざと癇に障る言い方をしてやった。すると、姉がこちらに振り向いた。

「驚かれちゃったわよ。おにぎり以外もできるんだって」

 ーーん? と僕は呆気に取られてまばたきをしてしまう。

 すぐに叱責の攻撃が降り注ぐと思っていたのに、向けられたのは姉の満面の笑みであった。

「ありがとっ」

 あれ? 僕はなんのために、今日サンドイッチを作ったんだ?

 それは姉を困らせて、プレッシャーを与えるためだ。

 きっと、食べるときは「大変だった」とか、「どう作った?」などと会話の流れになるはず。

 そうなれば、作っていないのだから、上手く返事ができないはず。それなのに、なんで?

 ここはむしろ、おにぎりにして、手を加えた方がよかったのか? 僕が失敗してしまったのか? 

 なんで、礼を言われたんだ?

「あんた、そこまでできるんだったら、ちゃんとおかずも作ってみたら?」 

 姉の喜ぶ様子に母親が提案する。

「そうよ。なんだったら、またサンドイッチでもいいわよ。美味しかったし。今度はパンの種類を変えてくれてさ」

 なんだ、それは。

 母親に便乗して姉がたたみかける。

 僕は絶句してしまう。

 今のはリクエストなのか? 困らせるためにやったのに、なんで逆に喜ばれるんだ? 僕の選択は間違っていたのか?

 しかも、悪い予感がしてしまう。何か苦しみが延々と続いてしまいそうな、そんな絶望感が……。

 目に見えないからより恐ろしい……。

 姉の反応には嫌な予感しかしない。

 絶対にいいことはないはず……。

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