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おにぎり日和   作者: ひろゆき


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34/41

 五食目  ーー  まぁ、たまには、ね  ーー (6)

 サンドイッチには自信があるのに、悔しいけれど、自慢ができない。

           6



 サンドイッチの仕上がりとしては、完璧だと自負していた。

 しかし、朝はいつもより早く起きたせいで、午後の授業が始まったころから急激に睡魔に襲われてしまい、あくびを必死に耐えながら授業を受けていた。

 こんなときは早く家に帰ってやろうと考えていたのに、最悪なことに今日は日直なのである。

 放課後、残らなければいけなかった。

 腹立たしいのは藤田だ。最後まで残ってくれるかと思いきや、「今日はバイトだから」とそそくさと帰ってしまいやがった。

 まったくもって、薄情な奴である。

 日誌を書き終え、苛立ちながらも帰ろうとしたとき、教室には僕以外、誰もいなかった。

 みんなすでに帰ったのか、部活に行ったみたいだ。

「あれ? 谷口くん、まだ残っていたの?」

 背伸びをして席を立とうかとしていると、教室の前の扉が開かれ、声をかけられた。

 顔を向けると、驚いた様子の福原がいた。

 やばい。忘れていた。福原のことを……。

「福原も残っていたのか? もう大野と帰ったと思ってた」

「うん。ちょっとね」

 急に緊張してしまう。福原は息を呑む僕を眺めながら、こちらに進んでくる。

 昨日、スーパーで会ったとき、唐突に弁当のことを疑われてしまい、声が詰まってしまった僕は、思わず逃げ出したのである。

 そこでちゃんと話しておけば、まだ上手くごまかせたかもしれないのに、半ば強引に帰ってしまった。

 まずかった。そんなことをすれば、余計に怪しまれるのは明白であったのを、そのときは理解できずにいた。その冷静さがなかった。

 だからだろうか。普段の制服姿である福原。どこか企んでいるように見えてしまう。

「さっきのサンドイッチ、おいしそうだったね」

「えっ、あ、そう?」

「あれって、やっぱり谷口くんが作ったんだよね?」

「ーーっ」

 思わず声が詰まってしまった。冷静になれ、平然としろ、と胸の奥で心が訴えても、気持ちとは裏腹に目を見開いてしまう。

 完全に動揺してしまっている。

 呆然とする僕をよそに、福原は僕の前の席に腰を下ろした。

「ーー違う?」

 含み笑いを浮かべながら、福原は首を傾げる。

「な、な、なんでそう思ったのさ。そんなことーー」

「最初に会ったときに買っていたシラス。それに麦飯も買っていたよね。そしたら次の日に使っていたし、昨日もおかずになりそうな野菜とかを買っていたからさ。それに藤田くんに茶化されてるとき、彼女のことを言われて照れて嫌がるって様子じゃなかったし」

 顔の横で指を突き立てて指摘する。

「それにさ、谷口くんって、おにぎりのことを話してるとき、ちょっと嬉しそうだったよ。気づいてた?」

 まばたきが止まらない。止まってくらない。

「ーーえっ?」

 バレてる、バレていた。

 一気に緊張が爆発してしまい、顔を伏せてしまった。恥ずかしくて顔を上げられない。

「ーー違う?」

 もう一度、福原の問いが降り注いだ。

 それは姉に弁当を強要されているときよりも、圧迫感が強くて萎縮してしまう。

 逆らえずに静かに頷いた。

 認めずにはいられなかった。

「なんで? なんで黙ってたの?」

 予想できた問いに、溜め息がこぼれてしまう。

「そりゃそうだろ…… 恥ずかしいじゃん……」

「ーー恥ずかしい?」

「……だってそうじゃん。男が自分の弁当を作って持ってきてるなんてさ」

 しかも、興味本位でネットを見、それに感化されて手を加えてしまったなんて、赤面ものであり、口が裂けても言えない。

「……そうかなぁ? 私はそうは思わないけど?」

「そうか? バカらしくないか?」

 想定外の反応に、思わず顔を上げた。すると不思議そうな表情の福原と目が合った。

「なんか、変じゃないか?」

「そうかな。私も自分で作ってるから、大変さもわかるし、それだけすごいなって思うよ」

 自分がおにぎりを作っているとバレると、ケタケタと笑われ、大いに茶化されると怯えていた。

 だから福原の反応に拍子抜けしてしまった。

 バレている……。

 バレていた……。

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