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おにぎり日和   作者: ひろゆき


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32/41

 五食目  ーー  まぁ、たまには、ね  ーー (4)

 嫌がらせ。

 これは復讐か?

            4



 月曜日の朝。

 僕を襲うのは苛立ち、焦り……。 不安……。

 わからない。

 ただわかっているのは一つ。

 今日は姉の分だけでなく、彼氏の分まで作らなければいけない、というだけ。

 だからこそ、苛立ちが際立ってしまう。昨日、僕はまったく承知なんてしていない。

 姉が勝手に話を進めているだけである。

 ここまでされると、拒むとどれだけの雷が落ちるのか、わからない。断れば何をされるか……。

 考えるだけで背筋が凍ってしまう。眉間にシワを作った姉の顔が脳裏に浮かぶと、かぶりを振った。

 わかった。わかりました。

 だから作ってやる。だが素直に作ってなんかやらない。

 姉を困らせるような弁当にしてやろう、と考えた。

 頬を引きつらせ、キッチンを眺めた。そこに並べられた用具を眺めた。

 ここに並べていたのは、いわゆるキャラ弁を作るためのお助けグッズであった。

 以前見つけたとき、半ば反射的にいくつか買っていたのである。

 もちろん、自分の弁当に使用するつもりはさらさらない。ただ興味が湧いて買っていたのである。

 好奇心だけで買っていたのを利用しようと考えた。

 姉はきっと彼氏の前で、初めて弁当を開くだろう。そのときもし、キャラ弁だったなら、どんな恥をかくだろうか。

 つい鼻で笑ってしまう。

 姉を懲らしめてやる。思いもよらない弁当を持たせることで。

 そう。これは僕にとって姉への嫌がらせである。

 これまで散々弁当を作らされたんだ。それぐらい、いいだろう。



 昼休み。

 僕の弁当を見た藤田は面喰らっていた。

「お前、今日の弁当はどうなってんだ?」

「どうなってるって、見てのとおりだよ」

 嘆願の声をもらす藤田に僕は言い放つ。

「あ、ほんとだ。おにぎりじゃないんだ」 

 藤田の驚きの声に、隣にいた大野が首を伸ばしてきた。

「へぇ。今日はサンドイッチなんだ。なんで?」

 ほしいオモチャを見つけた子供みたいに、目を輝かせる大野。

 まぁな。と平静になって応えていても、僕の意識は大野の隣に移っていた。

 隣にいる福原へと。

 僕の不安を見透かしてか、藤田と大野の好奇の目と違い、福原だけが僕を見ていた。

 何かを企んでいるような、不穏な眼差しで。

「あぁ、それで今日はお茶じゃなくて、カフェオレなんだね」

 福原が何を喋るのかオドオドしていると、福原は当たり障りのないことを言ってくる。

「なんで、今日はおにぎりじゃないの?」

「なんでって、さぁ。なんでだろう」

 ごまかしていても、福原の目が気になり、落ちつくことができない。

 不安が噴き出そうである。

「ただの気まぐれなんじゃないの……」

「いや、小学生じゃないんだし。わざわざこんなの作るか?」

「ほんと。これなら、藤田くんの言うとおり、彼女いるのかも」

「ーーだろ。絶対にそう思うだろ」

 藤田の呟きに、大野が声を弾ませる。すると、藤田は「だろ?」と大野を指差す。

「だから、それは違うって」

 そこにおにぎりはない。

 そう。おにぎりはない。

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