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おにぎり日和   作者: ひろゆき


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31/41

 五食目  ーー  まぁ、たまには、ね  ーー (3)

 作るつもりなんてないのに、なぜか体は動いてしまう。

            3



 姉の懇願はしばらく続いていたけども、ずっと無視をしていた。それでも、無謀な頼みの攻撃は、自分の部屋に戻るまで続いてしまう。

 僕にそんな義理はない、と揺らぎはしない。作る気はない、と毅然にしながらも、意識とは裏腹にスマホを眺めていた。

 見ていたのは、お弁当のレシピサイト。

 作るつもりはない。

 見ているだけである。

 強く心に言い切っていても、だが、である。

 夕方、僕はスーパーに足を運んでいた。あくまで自分のおにぎりの具材を探すためである。

 それでも、母親から頼まれた商品もあるのだけど。

 牛乳にハム。あとはウインナーだったな。これだったら何が作れるか……。

「これだったらタコさんウインナー?」

 タコさんウインナー……。いや待てよ、それを弁当に入れたら、子供っぽくなるかーー

「ーーっ?」

 今、僕は喋っていない。横から入ってきた声。聞き覚えのある声はまさか……。

「……福原?」

 前にもこんなことがあったな、とデジャヴに横に振り向くと、息が詰まって背筋を凍らす。

 そこにまたしても福原が不敵に笑っていた。

 淡いワインレッドのセーターに黒のスカートと、ちょっと大人っぽく見えてしまい、言葉が繋がらなかった。

「あれ、なんでここに?」

「うん。杏と遊んでて、そしたら杏に急用ができちゃって。その帰り。ついでだからね」

「そっか」

 なるほど、それで普段とは、とそうじゃない。また福原と遭遇してしまうとは。

「谷口くんは? また頼まれもの?」

 またカゴの中身を見て茶化されるのだと、身構えていると、そこには触れずに目を細めた。

「でも、やっぱりこれってなんだろう。なんか、おかずになりそうなのが多いね」

 素直に終われると安堵していると、「ね?」と言いたげに福原は首を捻る。

「まぁ、そうだな。多分母さん買い忘れたんだと思うよ」

 ここは大げさに反発せず、少しは肯定しておこう。

 上手くごまかせるのなら。

「ほんと、大変だよね」

「まぁ、毎日のことだからね」

 これで乗り切れる、と安堵して辺りを見渡した。このままごまかせる。

「やっぱり大変だよね。自分で作るとなると、いろいろ考えないといけないからさ」

「まぁね。結構、具も被るからーー」

 毎日の苦労がよぎり、頭を掻いていると、不意に手が止まる。

 ーーえっ。

 聞き間違いかと顔を見たとき、耳の辺りをかきながらの笑顔とぶつかった。

 嬉しそうに口角を上げていた福原と。

「ね、谷口くんってさ、いつものお弁当、自分で作ってるでしょ?」

 ーーん?

 ーーん?

 んなことない、よな……。

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