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おにぎり日和   作者: ひろゆき


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27/41

 四食目  ーー  自分のために作ってる、よな。  ーー (3)

 いつものおにぎりであっても、日々、変化はするものである。

            3



 次の日の昼休み。

「……なんだ、今日はやけにあっさりしているな」

 またか、と藤田のおにぎりへの指摘に、僕はげんなりしてしまう。

「まあ、どうせ「寂しい」とか言うんだろ」

 もう歯向かうのも疲れるので、僕はぞんざいに応えると、藤田は「いや」とかぶりを振る。

「いや、寂しくはないんだ。なんか違うんだよ。な」

「あ、ほんとだ。いつもと少し雰囲気が違う」

 藤田が話を振ったのは大野。もう彼女らに話しかけるのは定番となっていた。

 もちろん、そこには福原もいる。昨日のこともあるので、ちょっと気まずい。

「あ、これ麦飯?」

 福原は昨日のことは一言も触れず、おにぎりを眺め、すぐさま当てた。

「それでちょっと見た目が変わってるんだよ。だよね?」

「あ、うん」

 と濁してしまったが、ちゃんと理由はある。決して話すわけにもいかない。

 話せない。

 一昨日の夜のことは……。



「ちょっと、飽きた」

「ーーハァッ?」

 仕事から帰り、空になった弁当箱をキッチンのシンクに置きながら言う姉に、僕は眉間にシワを寄せた。

 ソファーに座ってテレビを見ていたけど、つい背筋を伸ばして姉を睨んだ。

 まずは感謝を寄せるべきではないのか。

 これまで作らせておいて、恩を仇で返すつもりなのかと睨んでも、姉にはまったく通用せず受け流され、無駄になってしまう。

「なんかさ、最近のおにぎりって、見た目は変わっていても、具が一緒だったり、ツナマヨが多かったりしない?」

「仕方ないだろ。ツナマヨは僕が好きなんだから」

 ソファーの背もたれに肘をかけ、体を反らして姉の方を向いた。姉は悪びれず続ける。

「だったら、もう自分で作れよ」

 そうだ。まだ立場は僕の方が上である。こちらはいつでも切り捨てる武器を持っているのだ。殿下の宝刀を。

「何、言ってんの。もう弁当の当番はあんたでしょ。それを破るなんて、何考えてんのよ」

 一振りすれば、天をも裂けると思って背を反らしたのに、姉の前では錆びた刀、もしくは竹刀でしかなく、脆く崩れてしまった。

「何? それともあんたって、約束も守れないような小さな男なわけ?」

 それどころか、胸の前で腕を組み、横柄な態度で睨み返してきた。

「ねぇ、どうなの?」

 あたかも自分が正論を話していると、言わんばかりに、責め立ててくる。しかも。語尾からして本気で怒りかけている。

 ……ったく。どれだけワガママなんだよ。

 これまで似たような場面で反論し、何度も逆ギレさらたことがある。それはそれで嫌なので、渋々、渋々ではあるのに、爆発しそうな文句を無理矢理喉の奥に戻しておいた。



 そして昨日、姉が文句を言わずに納得するものはないかと、放課後にスーパーへと足を向けていたのである。

 それでも、的確な具材は見つからず、とりあえず普段から使える具材をカゴに入れたとき、目に留まったのが麦飯であった。

 陳列されているのを見ていると、ご飯自体を変化させれば、と閃いた。

 だからと、五目などの炊き込みご飯は、朝から炊くのは手間がかかるし、玄米にするとまた具が難しくなる。

 その点、具を混ぜることも麦飯ならばできると考え、麦飯を買うことにしたのである。

 ちょうど、このときである。福原に声をかけりたのは。

 手法を変えるには、腹立たしい理由があるのである。

 従うしかないけれど。

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