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おにぎり日和   作者: ひろゆき


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23/41

 三食目  ーー  このまま慣れていくのか? ん?  ーー (7)

 神経が休まることがない。

 家でも、学校でも。

 鋭い眼差しが飛んでくるから。

            7



 今日は朝からどっと疲れた気になっていた。父親の提案のせいだ、と学校に来ても気持ちは鎮まらなかった。

 時間が流れていくことで落ちつくと思っていたのに、昼休み、目の前にいる藤田に、また神経が研ぎ澄まされてしまう。

 そうだ。まだこいつがいたんだ、と。

 後悔している最中、自分の弁当を広げながら、藤田が疑わしく僕の顔を見ていた。

 何度もおにぎりと見比べて。

 おにぎりは二種類。ヒジキの混ぜおにぎり、シラスと白ゴマ混ぜおにぎり。

 今回は海苔は巻かないでいた。テーマとしては「和」が上手くできたと納得している。

「やっぱ、おかしい」

 食べる前におにぎりを眺めていると、藤田が静かに呟いた。

「何がだよ」

「やっぱり、それ女っぽくないか?」

「またそれかよ」

 また昨日みたいな押し問答を繰り返しそうになり、呆れてうなだれてしまう。

 今日こそは嘘を暴いてやる、といきがる藤田。何か手段を握っているのか、おにぎりをマジマジと眺めている。

 黒いフレームのメガネが憎い。

「女の子っぽいって。んなことないだろ。ただ混ぜているだけなんだから」

 そう。意識なんてしていないさ。まさか、そこまで深読みするか。

 まだ気が休まりそうにないな、と諦めておにぎりを眺めてしまう。

 でも確かに、冷蔵庫にはまだツナが残っていた。

 僕の好物なのに、なんで使わなかったんだ? 別に毎日でも飽きないのに。

 なんでシラスを選んで、青じそがないことを悔やんだ? そんなに好きではないし、なくても問題はないのに。

 疑問を浮かべていると、不意に姉の顔が浮かんでしまう。あの、ニヤニヤと笑いながら、弁当箱を渡してきたときの。

 あれ? 姉ちゃん、香りの強いやつとか好きだったよな。パクチーや柚子それに青じそも……。

 待て、待て……。

 もしかして、僕は無意識のうちに、姉の好みに合わせていたのか?

 いや、そんなことは断固としてない。冷蔵庫のなかにあるのを選んでいただけだ。それだけだ。

 釈然としない。踊らされているみたいで気分が悪い。

「なんだよ、そんな怒らなくてもいいじゃんかよ」

 頬杖を突き、頬を歪めていると、藤田は驚いたのか、弱々しくぼやく。

 ハッとして顔を上げると、かぶりを振って苦笑した。

「いや、昨日嫌なことがあって、ちょっとそれを思い出していただけだよ」

「なんだよ、彼女とケンカでもしたか?」

「違うよ」

 まぁ、“女”という指摘には、あながち間違いではないが、振り回されている感覚に気分は優れない。

おにぎりで忘れようと、ヒジキのおにぎりに箸を入れた。

 無意識のうちに、好みに合わせていた?

 んなバカなっ。

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